特定の食物が原因となって、かゆみやじんましんなどの症状を引き起こす、食物アレルギー。子どもの疾患というイメージがあるが、大人になってから発症する「成人食物アレルギー」の患者数が近年増加していることはご存じだろうか。食物アレルギーは重症化すると命にかかわる。しかも、誰でも発症する可能性があるのだ。
『大人の食物アレルギー』（集英社）で、成人食物アレルギー研究・治療の第一人者である福富友馬さんが、成人食物アレルギーの症状・メカニズム・対処法などを詳しく解説している。
以下のうち、あなたに当てはまるものをチェックしてみてほしい。
□花粉症である
□自分または肉親がアレルギー体質である
□子どもの頃にアレルギーがあった
□食生活が乱れてor偏っている
□過度のきれい好きである
□最近、日光を浴びていない
□調理業や食品加工業など食物を扱う仕事をしている
□料理などで食材に触れると手がかゆくなる
いくつあっただろうか。実は、このうちひとつでも当てはまる場合は、成人食物アレルギーの発症リスクがあるのだ。
アレルギーといえば、特定の食物を食べ続けると発症するイメージがあるだろう。しかし、そうではない場合もある。たとえば、今や日本人の国民病と言ってもいい花粉症。花粉アレルギーをもっている人は、花粉と似た構造の果物や野菜でアレルギーを発症する可能性がある。
また、口から食べていなくても、調理業や食品加工業、主婦（夫）など、特定の原因食物を触ったり吸入したりして蓄積され、発症する場合もある。一見食物に関係がないところにもリスクが潜んでいる。医療従事者が使う手袋に含まれる天然ゴム（ラテックス）や、理・美容師やエステティシャンが使う化粧品・ヘアケア用品・石鹸などに含まれる天然由来の添加物も、アレルゲンとなりうるのだ。
このほかにもさまざまに、身近な引き金がある食物アレルギー。誰でも発症する可能性があるため、全ての人が正しい知識をつけておく必要がある。
食物アレルギーの症状は、以下の3タイプに分類できる。
即時型症状
原因食物を摂取した後、通常2時間（稀に4時間）以内にさまざまな臓器で症状が起こる。皮膚症状がもっとも多く、呼吸器、粘膜、消化器などに症状が出る。重症化するとアナフィラキシーになる。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
原因食物を摂取した後、2時間から最大4時間以内に運動をすると、アナフィラキシーの症状になる。
口腔アレルギー症候群
原因食物を食べた後、唇、口の中、咽頭といった口腔粘膜に症状が出る。アレルゲンが胃液や消化酵素に弱いため、症状が全身に至らない。
子どもの食物アレルギーは即時型の頻度が高いが、大人は食物依存性運動誘発アナフィラキシーや口腔アレルギー症候群が増える。
自分も発症リスクがあるかも？ あれってアレルギー症状だったかも？ と思ったら、本書で検査・対処法の確認を。食物が原因と思っていたら、ダニやアニサキスなど、ほかの原因だったという場合もある。原因食物が複数あるなど、検査しても原因の特定が難しいことも多い。
一筋縄ではいかない病気だからこそ、詳しく、正しい知識をもっていたい。本書を読んで、成人食物アレルギーを正しく知り、正しく恐れよう。
【目次】
はじめに
第１章 耳慣れない成人食物アレルギーとは
Column アレルギー疾患が次々と発症する「アレルギー・マーチ」
第２章 成人食物アレルギーの原因食物は何か
第３章 食物アレルギーはどのようなメカニズムで発症するのか
第４章 よくあらわれる症状とは
第５章 検査・診断はどのような流れで行うか
第６章 一人ひとり異なる適した治療・対処法とは
第７章 慢性的なアレルギー症状で困っている人へ
Column 加工食品のアレルギー表示ルールを理解する
おわりに
■福冨友馬（ふくとみ・ゆうま）さんプロフィール
1979年山口県生まれ。独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター臨床研究推進部アレルゲン研究室長。医学博士。2004年広島大学医学部卒業。沖縄県立北部病院を経て2006年から相模原病院アレルギー科に勤務、2009年同臨床研究センター研究員。2012年より現職。著書に『臨床現場で直面する疑問に答える成人食物アレルギーＱ＆Ａ』（日本医事新報社）などがある。
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