授業でワインのテイスティングをする大学がある?
テーマパークのつくり方から、ギャンブルも研究対象に?
世界には、「そんなことまで?」と驚くような研究がたくさんある! 『世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』(中央公論新社)は、その名の通り、世界各国のちょっとヘンな研究を、サイエンスライターの五十嵐杏南さんが集めた一冊だ。
外から見るとヘンでも、たとえばウマがたくさんいる地域のウマ科学や、小麦の大産地のベーカリー科学など、現地の人にとっては当たり前にあるものを研究している場合が多い。そんな「所変われば品変わる」研究の数々を、本書では紹介している。
アメリカ西海岸サンディエゴのカリフォルニア州立大学サンマルコス校でおこなわれているのは、サーフィンの研究だ。サンディエゴにはたくさんのサーフスポットがあり、「サーフィンのメッカ」とも呼ばれている。世界中からサーファーが集まる砂浜で、学生たちはウェットスーツに関する研究のため、サーファーの体じゅうに小さな丸い体温計を張り付けて海に送り出す。
サーフィン研究を立ち上げた、地元出身のショーン・ニューカマー博士は、子どもの頃からサーフィンをしてきた。ショーン博士はこんなふうに語っているという。
「サーフ研究のプログラムを立ち上げた時は、他の学者たちから変な目で見られました。それは本当に学問なのか、と。自分自身、サーフィンの研究をする意義を疑ったことがあります。本当はもっと、世のため人のためにできることがあるのではないか、と。でもサーフィンの研究にも、居場所があると思うんです」
著者の五十嵐さんは、「娯楽に研究は、ほぼ必須」「本気を出して遊ぶには、もっと本気の研究も必要」と書いている。一見「それって学問なの?」と思われても、むしろ、遊びこそが本気の研究対象になるのだ。
本書では海外の研究だけでなく、日本国内の、忍者・忍術学や温泉研究などのユニークな研究も紹介している。読めば今すぐ学びの門を叩きたくなるかもしれない。
五十嵐さんのモットーは、「堅苦しくなりがちな科学の話にユーモアを添えること」。科学に詳しくない人でも、気軽に楽しめる一冊だ。
〈目次〉
【Part1】 世界のどこでも、娯楽に研究は、ほぼ必須
・波に乗るには、頭脳も必要―サーフィン工学
・「馬の国」のウマ研究―ウマ科学
・お家にもスポーツにも、芝生は命―芝生の科学
・テイスティングは授業の一環?―ブドウ栽培とワイン醸造学
・テーマパークの夢を紡ぐ教育課程―テーマ空間学
・カジノの有名地では、統合型リゾートは研究の最先端―ギャンブル研究・エンターテインメント工学
【Part2】場所が変われば、研究も変わる
・先祖が住んだ海の国―水中考古学
・寒いと、モノは壊れやすい―北極圏工学
・砂漠を肥やすことの意義―砂漠農業
【Part3】地域それぞれ、寄り添う研究
・合法ならば、大麻は大学で教えて当然―大麻の化学分析
・「古き良き」が問われる時代―時計学校と研究開発
・小さな刺さないハチの底力―ハリナシミツバチの養蜂
・次の1000年には、世界で使われる?―アーユルヴェーダ医学
・小麦の大産地で、究極の主食を追求する―ベーカリー科学
・1万年続く最適化―羊・ウール研究
【Part4】日本にもある!ヘンな研究
・ソフトスキル的には、現代人も忍者になれる?―忍者・忍術学
・日本人は、アニメから影響されずにいられない?―アニメ研究
・富士山は、よくわからない10歳児―富士山研究
・いい湯だな。研究しよう―温泉研究
■五十嵐杏南さんプロフィール
いからし・あんな/1991年愛知県生まれ。日英両言語で物を書くサイエンスライター。時々サラリーマン、時々デジタルノマド。カナダのトロント大学で進化生態学・心理学を専攻(学士)。休学中に半年間在籍した沖縄科学技術大学院大学で執筆活動をはじめる。同大学卒業後、イギリスのインペリアルカレッジロンドンに進学。科学の専門家と非専門家をつなぐことを目的とした学問「サイエンスコミュニケーション」の修士号を取得。同カレッジ在学中に、NHK Cosmomedia EuropeやBBCでリサーチャーを務める。日本帰国後は京都大学の広報官を務め、2016年11月からフリーに。2019年9月、一般社団法人知識流動システム研究所フェロー就任。現在は、科学誌やオンラインメディアを中心に記事を執筆している。モットーは、堅苦しくなりがちな科学の話にユーモアを添えること。
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