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天皇の遺体が接した建物を全部壊した?! 日本人の独特な"死"の歴史

最期の日本史

 大河ドラマ『平清盛』など、数々のドラマやアニメの時代考証を手がけている人気歴史学者・本郷和人さんが、日本人の"死"にまつわる歴史をまとめた。『最期の日本史』(扶桑社)だ。

 日本史における"死"といえば、「切腹」「生首」「怨霊」などのワードが浮かぶだろう。これらの日本独特の"死"のイメージは、どのように生まれたのだろうか。そして、"死"に対する価値観はどのように変化してきたのだろうか。


 「切腹」は、海外でも「ハラキリ」として知られている自害方法だ。怖い・痛い・確実には死ねないという、あまり効果的に思えない方法だが、なぜ日本の武士たちはこの死に方を選んできたのだろうか。そこには、歴史を通じて、切腹という行為に付与された武士としての美意識があった。本書の「第二章 切腹」では、切腹の成り立ちと武士の死生観を詳しく解説している。

 また、時代の変遷によって大きく価値観が変わったのが「お墓」だ。現代では「終活」という言葉が生まれるほどお墓や葬式は重要視されるが、実は、数百年前までは日本でお墓を用意されるのは身分の高い人々だけだったという。さらに、お墓があってもどこに遺体が埋められているのかがよくわからないということも当たり前だったそうだ。平安時代の有力貴族であった藤原本家の人々でさえ、自分の父祖がどこに埋葬されたかを知らなかったというから驚きだ。

 一方で、現代にも残っている価値観が「穢れ」だ。日本人は古くから、死にまつわるものを忌み嫌い、できるだけ遠ざけようとしてきた。平安時代の朝廷では、穢れを嫌うあまり、天皇が崩御したときに遺体が接した建物をすべて破壊したという逸話まで残っている。一見過剰にも思えるが、遺体から発生する病原菌を避けるためには理にかなっていると本郷さんは評している。

 このほか、本書では「首」「怨霊」「葬送」などの切り口から、以下のような話題を収録している。

・いまもネットに残り続ける江藤新平の首
・処刑された首はどこへ行く?
・刀を呑み込む今井四郎、集団自殺の加茂一族......壮絶な武士の死に方
・なぜ、ペストは日本にやってこなかったのか?
・菅原道真の左遷は、怨霊化するほど恨みに思われるべき出来事だったのか?
・日本の怨霊ナンバーワン・崇徳院とは?
・看病の代わりに祈禱するのが当たり前だった中世日本
・日本でも万能薬として売られていたミイラ

 「かくいう私も、数年前に還暦を過ぎてから、自分の"最期"について思いを巡らす機会が非常に増えています」と語る本郷さん。"死"の歴史をたどることで、自分の人生の見え方も変わってくるかもしれない。

本郷和人さん
本郷和人さん

■本郷和人さんプロフィール
ほんごう・かずと/1960年、東京生まれ。東京大学史料編纂所教授。専門は日本中世政治史、古文書学。『大日本史料 第五編』の編纂を担当。著書に『空白の日本史』『歴史のIF(もしも)』『日本史の論点』(扶桑社新書)、『東大教授がおしえる シン・日本史』(扶桑社)、『日本史のツボ』『承久の乱』(文春新書)、『軍事の日本史』(朝日新書)、『乱と変の日本史』(祥伝社新書)、『考える日本史』(河出新書)、『歴史学者という病』 (講談社現代新書)など多数。


※画像提供:扶桑社


   
  • 書名 最期の日本史
  • 監修・編集・著者名本郷 和人 著
  • 出版社名扶桑社
  • 出版年月日2022年12月22日
  • 定価946円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・216ページ
  • ISBN9784594092733

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