世界から来て日本に住んでいるひとたちは、どんな人生を送っているのだろうか?
祖国を追われ難民申請中の、コンゴ民主共和国のひと。故郷が海面上昇で変わってしまった、モルディブのひと。民主化デモに参加した、ミャンマーのひと。アパルトヘイト時代を生きた、南アフリカのひと。ニュースで見ていたあの国のできごとは、すぐそばに住んでいるひとが経験したことかもしれない。
文筆家・イラストレーターの金井真紀さんが、世界各国から来た日本在住の18組20人にインタビューして、それぞれのエピソードを1冊にまとめた。『日本に住んでる世界のひと』(大和書房)だ。
上野公園でチェロを演奏している、北マケドニア出身のペレ・ヨヴァノフさん。北マケドニアは、ギリシャ・ブルガリア・アルバニア・セルビア・コソボに囲まれた、南東ヨーロッパの内陸国だ。ペレさんはイタリアで日本人女性と出会って結婚し、日本へ移住してきた。
北マケドニアという国に馴染みのない方も多いかもしれない。ペレさんは、生まれ故郷をこんなふうに語っている。
「ほんとにいい国なんですよ。でもマケドニアのいやなところもあって、それは人々が政党の影響を受けすぎているところ」。独立直後は経済が不安定となり失業率も上がってしまった。そこに「我が党に投票してくれれば、あなたのトクになりますよ」とおいしい餌をチラつかせて政党が人々の歓心を買ったという。
(本文より)
遠い国や知らない国のできごとも、日本に住んでいるひとたちの口から語られると、ぐっと身近に感じられる。金井さんのやわらかなタッチのイラストも印象的だ。
難民問題、地球温暖化、ジェノサイド、民主化運動、差別......お隣さんたちの人生から、世界が見えてくる1冊。
【目次】
●北マケドニア ペレ・ヨヴァノフさん
上野公園のチェリスト
●フィリピン 長谷川ロウェナさん
労働組合のリーダーとして仲間を守る
●モルディブ ラシード・モハメドさん
海面上昇で故郷はがらりと変わった
●日本生まれ、中国籍 黄成恵さん
横浜中華街育ち、元不良の料理人
●バルバドス スプリンガー・ドーン・エイミーさん
カリブ海から来た語学の達人
●アルメニア グラント・ポゴシャンさん
ジェノサイドを経験した国の大使
●韓国 崔命蘭さん
すぐ帰るつもりが75年、川崎のハルモニ
●アイスランド アルナ・イェンソンさん
人口が少ないから、いろんな仕事を掛け持ちする
●スペイン、イタリア ドメリコ・ヴィタリさん、アントニオ・ガルシアさん、泉類治さん
長崎のキリスト者たち
●中国・内モンゴル自治区 エンゲルさん
東京で起業したひと、ルーツは草原の遊牧民
●東ティモール マイア・レオネル・ダビッドさん
12歳で山岳ゲリラへ、いまは広島弁の父ちゃん
●セネガル パパ・ダウダ・ンゴムさん
サッカーボールを追い続けた青春
●ミャンマー キンサンサンアウンさん
1988年の民主化デモの後、17歳で日本へ
●エストニア ペーテル・パウル・ハッラステさん
両親はレジスタンスの闘士だった
●メキシコ 長谷川ニナさん
スペイン内戦で亡命した一家の子孫
●コンゴ民主共和国 ポンゴ・ミンガシャンガ・ジャックさん
入管法改悪デモで出会った、難民申請中のひと
●アメリカ ルーシー・クラフトさん
戦争花嫁の娘はジャーナリストになった
●南アフリカ ジョゼフ・ンコシさん
アパルトヘイト時代を生きたジェンベ奏者
■金井真紀(かない・まき)さん
1974年、千葉県生まれ。テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て、2015年より文筆家・イラストレーター。著書に『はたらく動物と』(ころから)、『パリのすてきなおじさん』(柏書房)、『マル農のひと』(左右社)、『世界のおすもうさん』(和田靜香との共著、岩波書店)、『戦争とバスタオル』(安田浩一との共著、亜紀書房)、『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)、『聞き書き世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし』(カンゼン)など。
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