本を知る。本で知る。

成績や読解力のためじゃない。ベテラン読み聞かせボランティアが語る、絵本が子どもに与える「大切な力」とは

(連載名)ミモザの読み聞かせ絵本

「読み聞かせというと、よく『成績が上がる』とか『読解力がつく』などのメリットが語られますが、そういうことは重要ではないと思うんです」

 そう語るのは、地域の小学校、公民館、美術館などで活動している、読み聞かせボランティア歴17年のミモザさん。BOOKウォッチの連載「ミモザの読み聞かせ絵本」で、全10回にわたって、読み聞かせにおすすめの絵本を紹介してくれました。

 今回は、ミモザさんに読み聞かせについて伺ったインタビューの後編です。前編はこちら→読み聞かせを経験できない子が増える? 読み聞かせボランティア歴17年のベテランが募らせる危機感

 ご自身がまだ子どもの頃から、弟と妹に読み聞かせをするようになり、「ただ読み聞かせが好き」で今もボランティアを続けているというミモザさん。ずっと読み聞かせをしているからこそ思う、読み聞かせの価値とはいったい何なのでしょうか。

ミモザさんがよく読み聞かせに使っている絵本
ミモザさんがよく読み聞かせに使っている絵本
「娘が子どもの頃、毎晩読み聞かせをしていましたが、読み聞かせができない日というのがありました。ひとつは、喧嘩したとき。それから、娘が高熱のときや、宿題が多くて寝る時間ぎりぎりになったときです。健康でないとき、心がトゲトゲしているときは、読み聞かせはできないんですね。

読み聞かせができるときというのは、元気で、心が穏やかなときなんです。そういった意味で、読み聞かせの時間はまさに"心豊かな時間"なんじゃないかと思います」

読み聞かせが与えるのは、「自分で何かを思ったり感じたりする心」

「6年生の、卒業前の最後の読み聞かせで、一度こんな話をしたことがあります。何かを見て、何かを思ったり感じたりする心を、感性と言いますね。それは本に限らず、絵や音楽や劇などでもそうです。

何かを見たり聞いたり読んだりして、何かを思ったり感じたりするということは、自分の心の中で起こることです。学校の勉強は、先生にこうしなさいと指示されますね。でも、物語を読んで何かを思うことは、誰の指示も受けていません。誰の指示も受けずに、自分で何かを思うということ、これはつまり『思想』です。絵本は、子どもに自分だけの『思想』を持つきっかけを与えてくれます。

読み聞かせは、勉強やスポーツのように、すぐに何かの結果が出るものではありません。でも、自分で思ったり感じたりして『思想』を持つということは、生きていくうえでとっても大切な力になるんじゃないかなと思うんです。だから、これからも何かを見て聞いて読んで、思ったり感じたりすることを続けてくださいねと、卒業していく6年生にそう伝えました」

子どもに感想は聞かないでください

 子どもたちに、本を読んだり、いろいろな芸術にふれたりし続けてほしい......そう願うミモザさんですが、「本が苦手な子には無理に読み聞かせをしないで」と言います。

「どうしても読み聞かせを嫌がる子どもはいます。『読書好きな子に育てたい』という気持ちもわかりますが、嫌がる子に無理に読み聞かせても、逆にもっと嫌がるだけです。その子の個性なのですから、本はやめて、その子の好きなことをさせてあげてください」

 もう一つミモザさんが強調するのは、「子どもに感想を求めないで」ということです。

「さきほども言った通り、読み聞かせとは、子どもが誰にも指示されることなく、自分の心で思ったり感じたりする時間です。だから、感想は誰にも言わなくていいんです。おもしろいとかつまらんとか、単純なことでもいい。自分の心で思ったり感じたりする、それだけでいいと、私は思っています」

 誰の指示も受けずに、自分の心の中で、何かを思ったり感じたりする力。それはきっと、子どもたちの人生の、大きな糧となることでしょう。

 「ミモザの読み聞かせ絵本」では、昔話の絵本、戦争の絵本、科学絵本など、さまざまなテーマで、読み聞かせにおすすめの絵本を紹介しています。ミモザさんのおすすめを参考に、ぜひみなさんも、お子さんに読み聞かせをしてあげてください。





 


  • 書名 (連載名)ミモザの読み聞かせ絵本

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