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「幹部女性自衛官」たちのキャリアと働き方。意外な実態とは?

女性自衛官

 22歳の元女性自衛官が自衛隊内での「性被害」を告発したことで波紋が広がっている。ところで、自衛隊の中で女性自衛官はどのような存在なのか? 本書『女性自衛官』(光文社新書)が、そうした疑問に答えてくれるのかと思い、読んでみた。

 著者の1人、上野友子さんは2011年、防衛省に防衛事務官として入省、現在は内閣府に出向中。2018年、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科に社会人学生として入り、修士論文を指導したのが、もう1人の著者である武石恵美子さん(同大学院教授)だった。

 本書は論文執筆のため、上野さんがインタビューした20人の女性自衛官への聴き取りが、もとになっている。対象は上級幹部とされる「佐官」の女性で、子どもも持っているのが条件だった。

 女性のキャリア形成において、妊娠・出産・子育てというライフイベントは大きな意味を持ち、男性のキャリア形成との違いが明らかになるからだ。

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女性自衛官は約7.9%

 

まず、自衛隊の組織や階級、女性の比率などについて説明している。

 自衛官は特別職の国家公務員だ。国家公務員は約60万人いるが、自衛官は約23万人にのぼり、国家公務員の4割弱を占めるというから、巨大な組織であることがわかる。

 このうち、女性自衛官は1万8259人(2021年3月末)いて、女性の占める割合は約7.9%だ。2030年度までに女性の割合を12%以上にすることを目標にしており、女性を積極的に採用しているという。

 自衛隊の特徴の1つに、階級組織ということを挙げている。上官の指揮命令により行動する実働部隊だからだ。階級は陸・海・空自衛隊において、それぞれ16階級が定められている。最も下位の「2士」から始まり、最上位が「将」となり、その中で、「3尉」以上を「幹部」と呼ぶ。幹部自衛官は現在約4万3000人で、うち女性が約2500人いる。

 自衛官の入口は、大きく2つに分かれている。1つは主に陸・海・空自衛隊の部隊の現場のスペシャリストである「士」として活躍し「曹」を目指すコース。もう1つはリーダーとして組織を率いる「幹部」を目指すコースだ。後者は防衛大学校を卒業、または一般大学を卒業し幹部候補生試験に合格し、幹部候補生課程(約1年)に入校し、終了後に3尉に任官されて、幹部自衛官として部隊で勤務する。

2018年、すべての職域が女性に開放された

 看護職域以外の女性の採用が始まったのは、陸上自衛隊が1967年、海上自衛隊と航空自衛隊が1974年で、女性が採用されても、直接戦闘する職域や肉体的負荷の大きい職域には配置されなかった。

 人材確保の観点から1993年に一部を除き、すべての職域を女性自衛官に開放、2018年に配置制限は撤廃された。

 ところで、彼女らはなぜ自衛官を目指したのか? そして、男性社会の中でどうアイデンティティを形成してきたのか? 本書からナマの声をいくつか紹介しよう。

 「小学生ぐらいのときに自衛官になろうと思ったのは、自衛官だった父に憧れたというのがあります。戦車乗りに憧れたというのが第一歩で、防大に入学しました」

 父親や男兄弟など身近な男性に将来の自身のモデルを見出すのが、女性自衛官の特徴の1つと指摘している。そのため、「女性」自衛官を特別なものと受け止めていないという。

 「自衛官にとって一番大切なのは使命感ですね。東日本大震災のときも、多くの隊員がどんなに恐怖心があっても、あの場にとどまって原発を含む各種震災対応をしていました。それは、『今ここで自分たちがやらなければ』という使命感があるからこそ成しえたのだと思います」

 国を守る、社会の安心のための任務を遂行できているということによって、女性自衛官のアイデンティティは明確になっているようだ。

 幹部自衛官は2~3年ごとに異動がある。本書に登場する女性自衛官も10回前後の異動を経験している人がほとんどだという。時には転居転勤を伴うが、「まずは受け入れるのが当然」と考えているそうだ。

 「転勤すると、いろいろな部隊、いろいろな部署に配置されて、自分自身の経験が積めると思う。自衛隊は、例えば、戦闘部隊、教育部隊、高射部隊、レーダーサイトの舞台とか、いろいろな基地があるから、様々な部隊を一通り経験しておくことは重要です」

 転勤と家庭、子育てとの両立はどうしているのか。夫と別居する形で結婚したという人や、異動の際に夫を残して子連れで赴任した人もいるという。組織的には夫婦や家族がなるべく同居したり近くに住めるようにしたりする配慮もあるようだ。

 とは言え、自衛官同士のカップルが多く、大きな災害要請があると、夫婦とも現場に行かなくてはならない事態も発生する。そういう際は親の支援を受けるケースも多いという。

 通して読むと、想像以上に自衛隊は「男女平等」で、女性自衛官は働きがいを感じていることが分かる。階級組織であり、部下にとっては「女性上官」ではなく「上官」として認識されているという透明性があるというのだ。

 もっとも本書は女性「幹部」が聴き取りの対象になっている。現場の「士」の女性たちは、どう考えているのか? モノ言わぬ巨大な実働部隊について、もっと知りたいと思った。





  • 書名 女性自衛官
  • サブタイトルキャリア、自分らしさと任務遂行
  • 監修・編集・著者名上野友子、武石恵美子 著
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2022年3月30日
  • 定価946円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・261ページ
  • ISBN9784334045999

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