昔飼っていた犬を愛していた。
どうしたら愛を証明できるんだろう。犬を愛していると確信する、あの強さで――。
『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)で、第167回芥川賞を受賞した高瀬隼子さん。2019年、デビュー作にして第43回すばる文学賞を受賞した『犬のかたちをしているもの』(集英社)がこのたび文庫版で登場した。
30歳の間橋薫は、恋人の田中郁也と半同棲のような生活を送っている。21歳の時に卵巣の手術をして以来、男性とは付き合ってしばらくたつと性交渉を拒むようになった。
郁也との交際時にもそのうちセックスしなくなると宣言をしていたが、「好きだから大丈夫」と言われていた。しかし、ある日、郁也に呼び出されたコーヒーショップに赴くと、ミナシロと名乗る見知らぬ女性がいた。郁也の大学時代の同級生で、「お金を払ってセックスをした相手」だという。彼女は薫に郁也の子を身籠っていること、そして「堕ろすのは怖いが子どもは欲しくない」と話し、こんな提案を持ちかけた――。
「間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり子ども、もらってくれませんか?」
子どもを産みたいと思ったこともなく、可愛いと思ったこともない薫だったが、郁也のことはたぶん愛している。考えぬいたうえ、産まれてくる子どもの幸せではなく、故郷の家族を喜ばせるためにもらおうかと思案するのだったが......。最終的に薫が下した決断とは?
1人の女性の「問い」を通して、セックスについて、愛について、子どもを産み育てることについて、真摯に描いた作品だ。
芥川賞受賞で注目されている高瀬さんのデビュー作。この機会に読んでみてはいかがだろうか。
■高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)さんプロフィール
1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞
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