今から約2500年前、古代ギリシア全土で27年間にわたる大戦争があった。ペロポネソス戦争だ。
アテネの歴史家・トゥキュディデスは、開戦直前に「この戦争は史上最大規模になる」と直感して自ら従軍し、戦争で見聞きしたことを生涯にわたって記録した。こうして生まれたのが、人類最古の本格的な歴史書『戦史』だ。
『戦史』は何世紀にもわたって、あらゆる政治家、軍人、学者たちに読み継がれてきた。そこには、時代を経ても簡単に変わることがない、普遍的な「戦争」の理論が記されているからだ。まさに今、世界のあちこちで衝突が起こっているこの現代においても、『戦史』は私たちに生きた教えを授けてくれる。
不安定な現代を生きる私たちのために、『戦史』の中から特に重要な6つの話をまとめた『最古の戦争史に学ぶ人が戦争に向かう原理 人はなぜ戦争を選ぶのか』(文響社)が発売された。
この作品はおとぎ話の要素に欠けるため、読者を退屈させてしまうかもしれない。
それでも、過去の出来事について明確な理解を得たいと望む者が、
わたしの作品を有用なものとみなしてくれれば幸いである。
人間性というものが変わらない限り、
未来は多かれ少なかれ、過去の再現となるからだ。
この作品は一時的な称賛を得るためではなく、
長く読み継がれるために書かれたものだ。
――トゥキュディデス『戦史』第1巻22章より
「新興国家が力を伸ばすと、それまで世界を率いていた覇権国家と対立する」。これはアメリカの政治学者グレアム・アリソンが提唱した、歴史上最も多い戦争勃発のパターンだ。ペロポネソス戦争で戦った新興国家アテネと覇権国家スパルタにそのまま当てはめることができ、このパターンは「トゥキュディデスの罠」と呼ばれている。近年では、中国とアメリカがこの「トゥキュディデスの罠」を避けられるかどうかが注目されている。
このように『戦史』に描かれている戦争の姿を知ると、どんな時代の読者が読んでも、なぜ今戦争が起こりそうになっているのか、どうしたら戦争を回避できるのかがわかってくる。戦争へ向かっていく指導者や国民の感情も記されており、大昔のギリシア人と、今テレビに映っている各国の指導者や国民が、きっと重なって見えてくるはずだ。
序章 ペロポネソス戦争と『戦史』
第1章 指導者はどのようにして戦争を正当化するか?
第2章 国のために命をかけることをどう捉えるか?
第3章 戦争の責任は誰にあるのか?
第4章 正義を貫くべきか? 目の前の実利をとるべきか?
第5章 強国が侵攻してきたとき、抵抗するか? 降伏するか?
第6章 敗色濃厚な作戦に対し、なぜ逆に熱狂してしまうのか?
特別解説 茂木誠 時代を超えた教訓に満ちた『戦史』
【著者】トゥキュディデス
紀元前460年頃‐紀元前400年頃。古代ギリシアの代表的歴史家の一人。紀元前430年から2年あまりアテネで流行した疫病を生き抜き、生涯を『戦史』の執筆に費やした。
【編者】ジョハンナ・ハニンク
ブラウン大学の准教授。著書に『古典的負債:耐乏の時代におけるギリシアの古代性』。ロードアイランド在住。
【訳者】太田雄一朗
上智⼤学外国語学部イスパニア語学科卒業。海外スポーツニュースの翻訳、スポーツ関連の原稿の執筆、⽇本サッカー協会、Jリーグなど各種スポーツ団体のWEBサイト制作に携わる。
【解説】茂木誠
ノンフィクション作家、予備校講師、歴史系YouTuber。学習参考書のほか、一般向けの著書に『世界史で学べ! 地政学』(祥伝社)、『「戦争と平和」の世界史』(TAC)、『政治思想マトリックス』(PHP)など。
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