2022年7月8日、氷室冴子さんの『海がきこえる』の新装版が発売される。
本書は、スタジオジブリの長編アニメーション「海がきこえる」の原作小説としても知られる名作少女小説。今回、氷室冴子さんのデビュー45周年を記念して、新装版が発売された。
アニメのキャラクターデザインを担当した近藤勝也さんのカラーイラスト34点を収録。装丁デザインは、コミックス『アオハライド』『君に届け』『青空エール』等の少女漫画や小説の装丁で瑞々しく、〝心に刺さる〟数多くの装丁を手掛けてきた川谷康久さんが担当する。
あらすじ
「あたし、高知に行くまでは世間とうまくやってるいい子だったのよ。あれからずっと世間とずれっぱなしの感じがする」
大学進学で上京した杜崎拓(もりさき たく)は「ある事件」で疎遠になった高校時代の転校生・武藤里伽子(むとう りかこ)が、地元大学への進学を蹴り東京に舞い戻った事を知る。気まぐれな美少女に翻弄されながら、その孤独に耳を澄ました短い日々を回想する拓に、思いもかけない再会の機会が訪れる。
巻末には女優・酒井若菜さんの作品解説も掲載。酒井さんの作品解説は、7月7日~7月28日まで期間限定でオンライン公開されている。
15歳のころ、オーディション会場で「最近観てよかったテレビドラマ、もしくは、どんな作品に出演したいか」と聞かれた酒井さんは、「海がきこえる、です」と答えたという。しかし、ジブリ作品としてアニメ化もされたのに、ストーリーを全く憶えていない。酒井さんはその理由を「ジブリにはいつもファンタジーを求めていた」からだと振り返る。
その点『海がきこえる』は、当時の私にとって身に覚えがあり過ぎた。思春期に起こりがちな家庭の問題、学校という閉じた世界で育まれる協調性、ジレンマ。女子同士の言い合い、嫉妬。男子との恋愛、虚勢。母性や慈しみに溢あふれたナウシカやシータからは感じられなかったあれこれ。(中略)そんなこの作品のリアリティが受け止めきれなかったのだ。(酒井若菜さん「解説」より)
酒井さんは、41歳になった今、本書を初めて読んで、「大人の心にこそ響く作品だった」と評している。
氷室冴子さんと言えば、『クララ白書』や『ざ・ちぇんじ!』、『なんて素敵にジャパネスク』シリーズなどで知られるYA作家だ。中学・高校時代に大ファンだったという方も多いだろう。氷室さんの激しくも切ない「90's青春グラフィティ」、大人になったあの頃の少女たちに、ぜひ。
■氷室冴子 (ひむろ・さえこ)さんプロフィール
1957年北海道生まれ。 77年「さようならアルルカン」で第10回小説ジュニア青春小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。『クララ白書』『ざ・ちぇんじ!』『なんて素敵にジャパネスク』シリーズ、 93年にスタジオジブリによってアニメ化された本作『海がきこえる』など小説作品の他、エッセイなど多数の作品がある。 2008年逝去。
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