最近、「生理の貧困」ということばをよく耳にするようになった。経済的な理由などから生理用品が十分に手に入らないことを指し、厚生労働省の調査によると、10代~20代の女性の12%余りが生理用品の購入や入手に「苦労したことがある」と答えている。その多くはナプキンを交換する頻度を減らしたり、トイレットペーパーやタオルなどで代用したりしてしのいでいるが、中にはかゆみやかぶれに悩む人も...。
では、ナプキンやタンポンはおろか、トイレットペーパーすらなかった時代、生理中の女性はどうしていたのだろうか。「ドイツでもっとも人気の婦人科医」として活躍するシーラ・デ・リスさんの著書、『もし親友が婦人科医で、何でも聞けるとしたら?』(サンマーク出版)に、その答えを見つけた。
本書は、月経や女性ホルモンのこと、更年期、セックス、デリケートゾーン、性病などなど、「女性が知っておくべき女性のからだのこと」を、友人とおしゃべりしているような調子で気さくに、わかりやすく教えてくれると、ドイツでベストセラーになった。
第1章「月経のこと」では、経血の色や量、生理痛、ピルのことなど、生理に関するあらゆる疑問に、シーラさんがざっくばらんに回答している。
本書によれば、子だくさんだった時代、とくに若い女性か、年配の女性をのぞいては、そもそも「生理がなかった」という。それは羨ましい......!と思ったら、理由は単純で、女性はつねに「妊娠しているか」「授乳しているか」のどちらかだったから。
シーラさんは、出血がある女性が少なかったことが、多くの文化で生理を「穢れ」としてタブー視する習慣を生んだのではないかと推察している。
長いあいだ、経血は汚らしく、穢れているとみなされ、生理中の女性は社会から排除されてきました。昔は、凶作や不作が続けば、その責任は生理中の女性のせいにあると白い目を向けられ、出血している女性がそばにいると、牛乳がすぐに腐ってしまうとまで言われたのです。
現在でも世界には、生理中の女の子が家族から隔離され、簡素な小屋で水も与えられず1週間過ごすことを強いられる地域もあるという。信じがたい話だが、生理用品のテレビCMが日常的に流れる日本でも、女性が生理を「周囲に知られてはならないこと」と考えるのは、もはや本能レベルで身を守ろうとしているからかもしれない。
では、ナプキンやタンポンが開発される前は、どうしていたのかというと......?
古代エジプトではなんと、パピルス紙を丸めたものをタンポンにしていたそうだ。また、ネイティブアメリカンの女性たちは、「驚くほど吸収性に優れた」杉の樹皮を使っていたという。さらには、何をするでもなく、ただ血を垂れ流すしかなかった時代も。
20世紀初頭になると、長い包帯を留め金のついたベルトで下着に固定するという「複雑なアレンジ」で切り抜け、1970年代になって初めて、包帯の裏に粘着テープを貼るというアイデアを思いついた人がいた。割と最近のことなんだ、と驚かされる。
ここ数年、「フェムテック」ブームで、生理用品の分野でもさまざまな便利グッズが開発されている。シーラさんのおすすめは、月経カップ。医療用のシリコンでできていて、膣内の経血がカップ内にたまる。最長12時間まで入れっぱなしにしておくことができ、漏れることはめったにない。消毒して何度も使えるので、エコで経済的だ。1人の女性が一生のうちに使うナプキン、またはタンポンの数はおよそ1万個だというから、「生理の貧困」に悩む女性たちの支援にもつながる。
(↑)ドイツ製の月経カップ。サイズやカラーバリエーションも豊富。
もう1つ、シーラさんのおすすめは、経血を吸収するサニタリーショーツだ。薄い素材で作られたショーツで経血を完全に吸収してくれるので、これさえあれば、ナプキンもタンポンもいらない。1枚のショーツの吸収力は、タンポンでいえば最大3個分に相当するという。
1章ではほかにも、「生理中のセックスは自粛すべき?」「生理期間中に血液の色はいろいろ変化する」「月経がごぶさたになったときに、考えられること」など、生理についての素朴な疑問について、やさしく解説している。さらに、ほかの章では「Gスポットにまつわる医学研究でわかったこと」「私たちにアンダーヘアが必要なわけ」「陰部のにおいって気になる?」など、女子トークでもなかなか聞きづらい話題が満載だ。
「もしも、親友が産婦人科医だったら、こんなことを聞いてみたい!」の答えがすべてつまった、女性のためのバイブル的な一冊。
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