貴志祐介、道尾秀介、湊かなえの三氏による選考で満場一致の受賞となった第8回新潮ミステリー大賞受賞作・京橋史織『午前0時の身代金』が話題を呼んでいる。新潮社は23日、デビュー作としては異例の発売4日で重版を決めた。
家に帰り、熟睡できないまま朝をむかえ、テレビをつけた僕の目に、ニュース速報が飛び込んできた。
――女子学生誘拐、身代金十億円の募集を要求。
それは、本條菜子が誘拐され、犯人がクラウドファンディングで身代金十億円を募集するよう要求してきたという、とんでもない事件を告げるニュースだった。
社会貢献を行う部署で働く新米弁護士・小柳大樹は、ある日、本條菜子(なこ)という大人しそうな学生の相談を引き受ける。ところが、相談内容は意外にも詐欺事件。しかも彼女は被害者ではなく、犯罪グループの命令によって、詐欺の受け子をやらされてしまった加害者だったのだ。抜け出した犯罪グループからの追手にそなえるため、小柳は彼女のホテルまでついていくことに。ところが、ふとした隙に、本條は姿をくらましてしまう。
そして翌朝。ニュースで報じられたのは、彼女が誘拐され、犯人グループが身代金を要求していること。そして、身代金受け渡しの場を「クラウドファンディング」、身代金を募集する相手は不特定多数の「日本国民」と指定するという声明だった......! 前代未聞の「誘拐プロジェクト」に対処するため、小柳はカエサルの「ガリア戦記」を愛読する事務所のボス・美里先生とともに、身代金募集に指定されたクラウファンサイトを運営する企業に赴くが......。果たして10億円は集まるのか。犯人とその思惑は一体――?
第8回新潮ミステリー大賞選考委員のコメント■京橋史織(きょうばし・しおり)さんプロフィール
貴志祐介氏「いっさい停滞することなく、最後まで一気読みさせてくれた」
道尾秀介氏「目新しい設定に引きつけられ、物語の起伏に興奮した。作家に必要なのは大嘘を信じさせる才能だと、あらためて思う」
湊かなえ氏「読後、『これが受賞するな』と確信しました」
1972年徳島県生まれ。東京都在住。お茶の水女子大学生活科学部人間生活学科卒業。一般企業に勤務しながら読書や映画を楽しんでいたが、30代半ば頃、内館牧子氏のエッセイ『切ないOLに捧ぐ』を読んで創作を身近なものに感じ、会社員をしながらシナリオ・センターに通いはじめる。第39回NHK創作ラジオドラマ大賞を受賞、ラジオドラマや舞台等の脚本を手掛ける。
その後、スイスへの転居をきっかけに小説執筆を開始。2021年、小説を書き始めて8年目に、本作で新潮ミステリー大賞を受賞。本作執筆のため大学の法律講座に通うなどして法律知識の習得に努めた。趣味は絵画鑑賞、海外旅行、ゴルフ、囲碁。
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