自己肯定感が低く、生きづらい。人間関係がうまくいかない。自分がこうなったのは、毒親に育てられたから――。
精神科医の斎藤学さんが理事を務めるクリニックには、「自分が不幸なのは、毒親に育てられたアダルト・チルドレンだからだ」と訴える人が多く訪れるという。斎藤さんは、「アダルト・チルドレン」という概念を日本に紹介した家族問題の第一人者。クリニックでは、家族機能の不全に由来する心のトラブルを専門に医療ケアを行っており、患者たちは「親の虐待行動の理由がわからない」「自分の行動に自信が持てない」という悩みを抱えている。
その斎藤さんが、毒親から受けた影響に今も悩まされ、苦しんでいる人々の「本当の問題」を解き明かし、自分の人生を取り戻すヒントとなる本を上梓した。
本書は、従来の毒親本とは異なり、「親からの解放」がテーマではない。人間関係に問題が起きた時、現在の不幸な自分を説明するための言い訳として、しばしば「毒親」という言葉が使われる、と斎藤さんは指摘する。
「私たちは常に自分を定義づけしながら生きていますが、どうしようもなくダメで絶望的な状況にあるとき、なぜ自分はこんなつらい目にあっているのか、それを説明する言葉がほしくなります。そこに「毒親」が登場すると、スッキリ納得できた感じがします。現在の自分の絶望的な状況、その理由を「毒親」に求めることで、かろうじて自己愛の維持をはかっているのです」
斎藤さんによれば、「患者が本当に抱えている悩みは毒親のことではない」という。
「「毒親」という言葉を使うことで表現しているのは、今現在の不安です。あなたが今、「毒親」以外で困っていることはなんでしょうか? 問題の多くは対人関係障害です。仕事であれ、結婚であれ、もうひとつ先に進めない。今の自分がうまくいかない原因は対人関係にあるのです」
厳しい言葉だが、過去に親から受けた仕打ちを恨んでいるだけでは、前に進めないのは確かだ。
「確かにあなたの親は毒親だったかもしれません。でもそれは過去のこと。自分の親が毒親だったと気づくことは人生をやり直すための出発点にすぎないのです。
うまくいかなかったことの原因探しはやめて、自分を変えることに目を向けてみませんか?」
目次は以下の通り。
第1章「毒親論」の背景
第2章 すべては罪悪感からはじまる
第3章 すべての親は「毒親」?
第4章 「毒親論」を手放してどこへ向かうのか
第5章 他人とともに現実を生きる
第6章 現代日本人のアレキシサイミア
第7章 小説『明暗』が語る返信(成長)
■斎藤学(さいとう・さとる)さんプロフィール
精神科医、家族機能研究所代表。1941年東京都生まれ。1967年慶應義塾大学医学部卒。同大助手、WHOサイエンティフィック・アドバイザー(1995年まで)、フランス政府給費留学生、国立療養所久里浜病院精神科医長、東京都精神医学総合研究所副参事研究員(社会病理研究部門主任)などを経て、医療法人社団學風会さいとうクリニック理事長、家族機能研究所代表。医学部卒業後、母校の神経科学教室で精神分析のトレーニングに入る。同時期より、国立アルコール症センターとして発足した久里浜療養所(当時)で臨床にあたりつつ、アルコール依存症など「依存症」という用語を提唱し定着させ、依存症の家族に代表される、温かさや安心感などが提供できない機能不全家族で育った「アダルト・チルドレン」という概念を日本に広めた。著書に『すべての罪悪感は無用です』『「愛」という名のやさしい暴力』(ともに小社刊)など多数
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