「四十にして惑わず」――。不惑の境地に達しているアラフォーはどのくらいいるだろうか。
人生の半分以上、沼にはまり続けて20年。アラフォー、独身、実家暮らしのオタク漫画家・竹内佐千子さんは「今日も惑いまくっています!」という。
本書『沼の中で不惑を迎えます。輝くな! アラフォーおっかけレズビアン!』(集英社)は、そんな竹内さんが「決して輝かず、されど奇妙に充実した時を刻む」コミックエッセイ。
表紙とタイトルに圧倒された。いざ読んでみると、アラフォー世代の1人として「そうなんだよ!!」と熱く共感できるものだった。
不惑を迎えるはずの身にふりかかる、推しの結婚、お金や健康問題、親の介護や自身の老後への不安......。オタクにも非オタにもあまりにも切実すぎる、全アラフォー必読の書!
ウェブメディア「よみタイ」では、第1話「『推し』が結婚するそうです」の途中まで試し読みできる。そこから一部紹介しよう。
実家暮らし38年目。「ここまで来ると もうずっと両親とやっていく覚悟を決めたよ!!」と自己紹介しているところへ、竹内さんの中に住んでいるという「妖精さん」が登場する。
妖精 「結婚も出産もしないで将来が不安じゃないの?」
竹内 「てゆうか将来は不安だよ!! 病気 介護 金 災害 孤独 政治 めちゃくちゃ不安だよ!! クソがつくほど!!」
ブチギレしたところで、「結婚」を「羊の肉」に置き換えて人生観を語りはじめる。竹内さんは羊の肉が嫌いで、どんなにおいしてくもどうしても食べられなかったという。
「知らなくていいことはたくさんあるし やらないで後悔していいこともたくさんあるんだよ ただでさえ選択肢の多いこの世の中で 幸せのために選択しない勇気も必要だよ」
「結婚=幸せ・親孝行・勝ち組」という「ものさしを作った人間が罪深すぎて釜ゆでの刑だよね」としながらも、竹内さんは結婚を否定している訳ではない。
「結婚は法律をうまく利用できる手段だと思っていて 他人と公的な力を持つ関係になれる訳だから 病院の面会とか遺産のこととか だから結婚という選択をすることは人生で当然アリだと思ってる 出産もね」
自分はそれらを「選択」しなかっただけ。「まあ そんなことをいろいろと考えて日々生きてます私」。
2020年9月。ポワンポワンポワン......。竹内さんのスマホにメッセージが続々届いた。「大丈夫?」「生きてる!?」。
「なんかみんなにすごく心配されてるけど 私 病気にでもなったっけ?」と思っているところで、衝撃のニュースを目にする。「東方神起チャンミンが結婚を発表」――。
「アイドルのために生き アイドルのために息してる だって私 一生懸命働いて生きてるんだよ...? 毎日アイドルのことしか考えてないなんて...(中略)当たり前でしょうがーーー」
ブリブリブリ......。そこへ編集者のエイチさんから着信が。気が動転しながらも、推しが結婚したこと、畳一畳分のポスターをはがそうか迷っていることを告げた竹内さんに、エイチさんは言った。
「えっ!? 竹内さん生きて!!」
「いいじゃないですか...!! 人の夫ですけど 元々は知らないおばさんの息子だったわけだし!!」
■目次
はじめに
第1話 「推し」が結婚するそうです
第2話 忘れられたレズビアン
第3話 実家で暮らし続ける女
第4話 あつまれ! 農民の沼
第5話 蘇らない、オタク
第6話 アングリー・アンチエイジング
第7話 お金で幸せが買えるなら
第8話 私をオタクと呼ばないで
第9話 老女たちの桃源郷
第10話 あの頃の未来に立ててなくても
最終話 さようなら、全てのアラフォーオタク
オタクの履歴書インタビュー
あとがき(みんなへ)
突拍子のないやりとりに、ダイナミックなイラスト。こちらまでテンションが上がる。面白さの中に、アラフォー世代の切実な思いがしかと描かれているところもいい。本書は、笑って共感して元気になる1冊。
■竹内佐千子さんプロフィール
漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。近著に『赤ちゃん本部長(1)~(3)』(講談社)、『これからは、イケメンのことだけ考えて生きていく。』(ぶんか社)などがある。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?