超高齢化が進む日本では、認知症は身近な病気だ。自分がかかる以外にも、介護する側として関わることも考えられる。いざ、その時がやってきたときのための本を紹介する。
2021年4月21日、『ボケ日和―わが家に認知症がやって来た!どうする?どうなる?』(かんき出版)が発売される。
いま、多くの人が「自分がボケるかもしれない」「親がボケたらどうしよう」という恐怖を抱えている。しかし、認知症専門医の著者・長谷川嘉哉さんいわく、「怖い」と思うのは、認知症のことをほとんど知らないからだという。「認知症がどんな病気かを知っていれば、介護はけっこうなんとかなる」と、予備知識さえしっかり持っていれば、それほど恐れることはないと説く。
本書では、認知症の進行段階を「春」「夏」「秋」「冬」の4つの章に区切って、「そのとき何が起こるのか?」「どうすれば良いのか?」を多数の患者さんのエピソードを交えながら読みやすいエッセイとして記した。
『大家さんと僕』の矢部太郎さんによるイラストも、心をほっこりさせてくれる。
本書の内容を少し紹介しよう。
家族から認知症を疑われ、長谷川さんのクリニックを受診した患者の中に「早期認知障害」の人がいたという。早期認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、認知症の一歩手前のことだ。日常生活に支障が出るほどではないものの、認知機能が低下している状態のことを指す。
MCIの約4割の人はこの状態でとどまる。しかし、放っておくと5年以内にだいたい5割が認知症に進むという報告もある。このことから、MCIの人を「認知症予備軍」と呼ぶ場合もある。65歳以上のMCIの患者の数は、日本では約400万人。実に6人に1人という高い割合だ 。
MCIの患者の特徴をひと言で表すと「ちょっと変」。「すごく変」ではないところがポイントだ。これまでどおり家事や仕事はこなせるし、難しい本や新聞を読むこともできる。でも、家族からすると、「あれ?」ということが増えてくる。
MCIの症状には次のような特徴がある。
● 待つことが難しくなってくる
● ものの置き場所やしまい場所をやたらと忘れてしまう
● 衝動を抑えるのが苦手になる
● 自分の好き勝手なふるまいをする
● 思い通りにならないとイライラして怒りだす
● 「知らない」「聞いてない」とよく言う
このように些細な症状だが自制がきかなくなり、周囲のひんしゅくを買ってしまう。認知症というと高齢者のイメージだが、MCIによる前頭葉の衰えは早い人では50代を過ぎたころから見られるようになる。
認知症は今のところ治らない病だ。しかし、MCIの段階で薬物治療や脳リハビリを行えば、認知症へ進むのを止められることがあるという。長谷川さんは、「もっと早く知りたかった」という人の声にこたえて、本書を執筆した。「はじめに」では以下のように書いている。
「だから先生......なんでそんな大事なことを、早く教えてくれないんですか!」 最近、このように怒られることが増えたので、これから認知症のあれこれについてお伝えしようと思います。
なぜならみなさん、驚くほど認知症のことを知らないからです。
(中略)
はじめに知っていればしなくて済む苦労というのが、認知症介護には実はたくさんあります。そうした知識を事前に得ておくということは、ボケてしまったあなたの大切な家族を、介護疲れの果てに憎まずに済むということです。最期のときに、笑顔で見送れるということです。
いざというときの力の抜き方を知っていれば、いつの日か家族がボケても「今日はポカポカとあったかくて、ボケ日和だねぇ」なんて、親子でのんびり言い合える日がくるかもしれません。 ちょっとした知識さえあれば、それはきっと、難しいことではないのです。
各章には、私がこれまで医療現場で出会った、たくさんの患者さんとご家族に仮名でご登場いただいていますが、あなたはすぐに気づくはずです。
これは、あなたと、認知症になったあなたの大切なご家族の物語でもある、ということに。
今から、あなたたちご家族の物語を始めようと思います。
人生100年時代、誰もが避けられない道ですが、認知症専門医が対処法をお伝えします。
人生100年時代、誰もが認知症に無関心ではいられない。「その時」が来る前に知識を備え、過度に恐れることなく、力を抜いて向き合っていきたい。
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