優れた出版活動を続けている中小出版社を顕彰する「第35回梓会出版文化賞」(出版梓会主催)の贈呈式が2020年1月15日に東京都内で行われた。
対象となるのは、年間5点以上の出版活動を10年以上にわたって継続している中小出版社で、各出版社からの自薦図書と一般読者から寄せられた推薦図書をもとに選考される。今回は自他選含めて72社からの応募があった。
受賞したのは、教育関係の図書を出版しているジャパンマシニスト社。そして同特別賞に西日本の文化に特化した本をつくっている西日本出版社が選ばれた。
ジャパンマシニスト社は創業60周年で、従業員は15人。機械工学系の出版物からスタートしたが、現在の柱は子育てや教育の本で季刊雑誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」(1993年創刊/略して「ち・お」)と「おそい・はやい・ひくい・たかい」(98年創刊/略して「お・は」)は、それぞれ100号以上続いている。受賞社の推薦図書に「清潔育児をやめないか?」(「ち・お」121号)や「『平成』の子育ては、なぜ難しかったのか。」(「お・は」102号)が挙げられた。
選考委員で文芸評論家の斎藤美奈子さんは、選考のことばとして、受賞に至った理由を以下のようにコメントしている。
「いっけん単行本風です(というか、よくよく見ても単行本です)。実際、中身は保存版にふさわしい充実ぶりで、(中略)文部科学行政が混迷をきわめ、子どもたちを取り巻く教育環境も良好とはいえない現在、独自の視点で子育てや教育を語る雑誌が存在することの価値は計り知れません」
贈呈式では、代表取締役の中田毅さんが登壇し、授賞の喜びを述べるとともに、いま一番伝えたいのは「香害」に関することだと述べた。同社の出版物には化学物質過敏症をテーマに香害問題にも触れた『空気の授業』がある。
特別賞の西日本出版社は、2002年に設立。従業員4人という小さな出版社だ。奈良少年刑務所(2017年閉庁)で詩の講座を受け持っていた作家の寮美千子さんが受講生たちとの10年間を振り返った著作『あふれでたのは やさしさだった』が高く評価された。
代表取締役の内山正之さんは、贈呈式後のインタビューで、最初はなかなか売れなかったが全国の書店の方に読んでもらい地道な活動を続けた結果、作品の良さを理解してもらえ、少しずつ売れるようになったと出版後の苦労を述べた。
なお、同会場で「第16回出版梓会 新聞社学芸文化賞」の贈呈式も行われた。新聞社や通信社の文化欄・読書欄を担当する記者らが選考し、一般読者目線で「おもしろい本」を出した出版社を表彰する。今回は『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』、『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』などを出版した柏書房と、『社会学はどこから来てどこへ行くのか』、『アメリカに日本のマンガを輸出する』などを出版した有斐閣が選ばれた。
梓会は出版界と読書文化の復興を目標に、有志出版社によって1948年に設立された出版団体。2012年に一般社団法人出版梓会へと移行し、現在は専門書を中心とする中小出版社108社が参加する出版文化事業団体として活動している。
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