老人ホームで働くことは、きつい、汚い、体力仕事などマイナスのイメージだけを持つ人も多いだろう。新米介護職員がつづったコミックエッセイ「老人ホームに恋してる。」(祥伝社)には、それとは違った心あたたまる一面が描かれている。
著者の大塚紗瑛さんは、静岡の老人ホームに勤務している。仕事中に心動かされた出来事を絵日記やマンガにしてSNSに投稿していたのが話題となり、書籍化となった。
紹介されているエピソードは、人生の大先輩である施設利用者から介護職員にかけられる感謝の言葉や気遣いの心だったり、何気ない会話の中に突然センス抜群のユーモアが飛び出す面白さだったり、亡くなった方を思い出しながら改めて感じる人のあたたかさだったりする。
そんな"心がほどける瞬間"が、新米介護職員の奮闘とともに描かれている。本書に綴られるエピソードに共感する現役介護職員も多いそうだ。
大塚さんは京都の芸術大学を2018年に卒業した。在学中、老人ホームでのインターンシップに参加したことから、自分のやりたいことを真剣に考えた結果、福祉の仕事に就いた。しかし、周囲からは「まだ若いのに......、芸大を出たのに......、わざわざ大変な仕事に就かなくても......」と冷たい視線を受けたという。
大塚さんには、仕事で疲れ心も体も余裕がないときがあったそうで、介護は大変な仕事であることに間違いない。しかし、そんなとき老人ホームで感じた、"心がほどける瞬間"を思い出すと、また頑張ろうという気持ちになるという。
本書には素直な言葉とイラストで老人ホームの日常をつづったエッセイのほか、施設についての説明や、職員のタイムスケジュール、用語解説などのコラムもある。介護の仕事に興味をもつきっかけにもなりそうな一冊だ。
あとがきで、大塚さんは次のように書いている。
「私がいちばん辛いと思うことは『興味をもたれないこと』です。この本を読んで何かを考えていただけたら、感じていただけたら、とっても嬉しいです」
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