コロナ禍により、巣ごもり生活を余儀なくされている人も多いだろう。慣れない自炊を始めたが、レシピ本通りに作ろうとすると、けっこう時間や食材費がかかる。もっと手軽に自炊をしたい人にオススメなのが、本書『意識の低い自炊のすすめ』(星海社新書)だ。
著者の中川淳一郎さんは、博報堂勤務の後、フリーライター、雑誌編集者などを経て、現在はネットニュースサイトの編集者。『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)など無遠慮だが本質を突いた鋭い物言いに定評がある。
評者も中川さんの週刊誌コラムを愛読している。料理の専門家でもない人がなぜ料理本を書いたのかと思い、本書を読んだら、すっきりした。基本的な考え方はこうだ。
・料理なんてものはやりたい人がやればいい ・料理が上手だからってエラいわけではないし、料理ができなくても卑下する必要はない ・食事は毎日2~3回はするものだから毎回渾身の力を込めなくてもいい。ラクすりゃいい
もちろん自炊のレシピも載っているが、「中食」「外食」も含めた食を無理なく楽しむ「考え方」を紹介している。そして中川さん自身は、これは「思想書」である、と書いている。
料理のプロではないが、20年以上自炊を続け、料理ができない奥さんに代わって毎食、料理を作っている。また雑誌編集者時代は食関連の特集を手掛けてきたので、料理業界にも詳しい。「意識がいかに低くてもそこそこおいしい料理は簡単に作れる」と訴える。
本書の構成と評者が参考になると思った項目は以下の通り。
第1章 自炊はもっと手抜きしていい 料理の苦手な女性もいる。できる人がやればいい 味の素を否定するな、権威の言うことを鵜呑みにしないでもいい レシピはあくまで参考に 第2章 楽すると自炊は楽しくなる パックご飯を否定するな 必要な料理器具は案外少ない 毎日同じものを食べても構わない(カレーの活用法) 「この調味料・食材は〇〇に使える」をマスターせよ 第3章 意識の低い料理人が最低限知っておくべきこと 業務用スーパー使い倒し術と何が何と合うのか 煮干しの頭と内臓は抜かなくてもおいしい なぜその部分捨てちゃうの? 第4章 自炊のための外食のすすめ 飲食店の常連になれ エラソーな寿司屋に無理して行くな、持ち帰り寿司は悪くない 百貨店のレストランは意外といい 第5章 意識の低い合理的おすすめレシピ 簡単ちらし寿司のつくりかた アンチョビの使い方 ケンミンの焼ビーフンの実力
具体的なレシピについては本書を読んでもらうことにし、超合理的な考え方だと感心したのは、第2章のカレーの活用法だ。中川家ではカレーを以下のように使い回ししている。
初日夕食 カレーライスにする。目玉焼きをトッピングにする。 2日目朝食 これも同様にカレーライスで目玉焼きトッピング。 3日目朝食 茹でたパスタにカレーをかける。 4日目朝食 焼きカレーを作る。 5日目朝食 あくまでも冬場の話で冷蔵庫保存の場合。最後に残ったカレーの鍋に麺つゆと水を入れ、カレーうどんにする。麺は冷凍麺が最も合う。
作った翌日は冷蔵庫に入れ、夏場は3日目以降は冷凍しているが何も問題はないという。一度カレーを大量に作ってしまえば、様々なバリエーションで朝食作りが楽になる。
中川さんは「料理を含めた食関連の話題は、人によって言っていることが違いすぎる」として、権威を疑い、自分がいいと思ったものこそいいものだ、と勇気づけている。
いわゆる「男の料理」とは異なり、食材や調味料にもこだわらず、手軽に自炊できそうなのがポイントだ。「手作り」信仰でガチガチになっている主婦にこそ読んでもらいたい。
この春以来、料理本、レシピ本を買い集め、少しずつ自炊の機会を増やしてきた評者も、ようやくこの本で「打ち止め」となりそうだ。
BOOKウォッチでは、『syunkonカフェごはん レンジで絶品レシピ』(宝島社)、『絶品おかずはめんつゆで』(学研プラス)、『『朝仕込み』だから、帰ってすぐできる! おいしいレシピのひみつ』(朝日新聞出版)などレシピ本を多数紹介済みだ。
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