読むべき本、見逃していない?

人権弁護士はどうやって食べているのか?

弁護士になりたいあなたへ Ⅲ

 司法試験改革により合格者が増えたため、新たに弁護士になった人も急増。食うのも大変な弁護士もいると聞いた。実際のところ仕事や収入はどうなのか? 本書『弁護士になりたいあなたへ Ⅲ』(花伝社 発行、共栄書房 発売)は、若手弁護士10人へのインタビューを通して、弁護士の実像に迫った本である。

青年法律家協会が企画した本

 本書を企画したのは青年法律家協会弁護士学者合同部会(会員2400人)。いわゆる人権弁護士が集まった団体だ。登場する10人も会員だから、お金よりも正義の実現のため、弱者を守りたいと弁護士をめざしたという人が多い。

 仕事の開拓について、何人かの声を紹介しよう。

 「大きい事務所や事件がやってくる事務所なら、待っていても仕事は来ます。うちは弁護士2人の事務所で、基本的には自分で取りに行かないと自分の事件はない」(弁護士登録2014年・男性)
 「うちは労働事件中心の事務所なので、いかに組合の方に信用されるかということが大きいですね。裁判しなきゃという段階でうちを選んでもらう、そのためには普段の信頼、実力が重要になります」(弁護士登録2011年・男性)
 「弁護士になりたてということもありますが、会社員でいた時の方が報酬は多かったです。まだどうすればいいかアイデアはないですね。ホームページを充実させるべきなのか、弁護士ドットコムなどと契約すべきなのか」(弁護士登録2018年・女性)

 事務所の性格もあり、労働事件、刑事事件、少年事件にかかわっている人が多い印象を受けた。

上の世代への批判も

 人権活動と生活に必要な稼ぎを両立するために、稼ぐところは相続とか不動産関係などで稼ぎ、残りを人権活動に当てるというバランスを強調している人がいた。上の世代には「お金はあとから付いてくる」と人権活動をしていれば食っていけなくてもいいのだ、という感覚の弁護士もいるという。それを「勘違い」と批判している。

さまざまな訴訟にかかわる

 カネボウ白斑事件の被害者の弁護団、ジャパンライフの被害者の弁護団、LGBTの同性婚訴訟の弁護団、ヘイトスピーチに対する告訴事件で朝鮮学校の代理人、ハンセン病家族訴訟の弁護団など、インタビューに応じた弁護士は、いずれも「弱者」を支えるさまざまな訴訟の当事者としてかかわっている。それぞれ裁判へのかかわりや闘い方について率直に語っている。いわゆる「弁護士」のイメージは、彼ら人権弁護士がかたちづくってきたと言えるかもしれない。

法学部を出ていなくても弁護士に

 ロースクールの中には、法学部を出ていない未修者を対象にしたコース(3年制)を設けているところもある。本書でも東京外国語大学外国語学部から一橋大学法科大学院修了という女性と関東学院大学を卒業後、製薬会社のMRを退職し、青山学院大学法務研究科修了という女性が登場している。未修から弁護士になるのはどういう人なのか、評者は以前から興味があった。

 学生時代のボランティア体験や製薬会社のMRの経歴が、それぞれ今の弁護士としての活動につながっているようだ。幅広い人材を法曹界に導くという司法試験改革の目的の一つは、いくらかは達成されたと思った。

弁護士の生活ぶりがわかる

 本書には10人の弁護士が実名、写真、経歴付きで登場している。平日と休日のスケジュールも載っており、弁護士の生活ぶりがうかがえる。

 インタビューの合い間には「弁護士になるためには」「司法試験とは」「司法修習生」の3つのコラムがあり、これから弁護士をめざす人の参考になるだろう。

 2005年まで続いた旧司法試験時代の合格率は1~2%の狭き門だったが、2019年の新司法試験の合格率は33.63%とぐっと間口は広くなった。その分、弁護士は増えて競争は厳しくなった。それでも若手の人権弁護士は、なんとか頑張っている様子が本書から伝わってくる。

 今さかんにCMが流れているB型肝炎の事件も、もともとは青法協の会員が中心となって手弁当で弁護団を組んで国と闘い、国に救済法を作らせたという。その結果、お金になる事件となり、新興の法律事務所がお金を稼いでいるという現状になっているそうだ。

 「青法協」と聞いて身構える人もいるかもしれない。しかし、本書から「イデオロギー」色は感じられない。それもまた現役弁護士の実態だろう。弁護士をめざさずとも弁護士業界に関心のある人には興味深い話が満載の一冊だ。

 BOOKウォッチでは弁護士、司法試験関連で、『弁護士はBARにいる』(イースト・プレス)、『弁護士の格差』(朝日新書)、『ママは殺人犯じゃない』(インパクト出版会)、『法廷遊戯』(講談社)など多数紹介済みだ。

  

 


  • 書名 弁護士になりたいあなたへ Ⅲ
  • 監修・編集・著者名青年法律家協会弁護士学者合同部会、久保木亜澄 編
  • 出版社名花伝社 発行、共栄書房 発売
  • 出版年月日2020年8月30日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・264ページ
  • ISBN9784763409362

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