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ラーメンを食うと、水を飲みたくなるのはなぜ?

血圧を最速で下げる

 血圧に関する本は山のように出版されている。雑誌などの特集も多い。それだけ気になっている人がたくさんいるということだ。本書『血圧を最速で下げる――老化を防ぐ「血管内皮」の鍛えかた』(幻冬舎新書)もそうした人向けの一冊。帯には「高血圧に薬はいらない」という大胆なキャッチが付いている。

生活習慣病につながる

 著者の奥田昌子さんは京都大学大学院医学研究科修了。内科医。健診ならびに人間ドック実施機関で三十万人近くの診察にあたってきた。航空会社産業医を兼務。著書に『内臓脂肪を最速で落とす』『胃腸を最速で強くする』(幻冬舎新書)、『日本人の病気と食の歴史』(ベスト新書)などがある。いずれもBOOKウォッチで紹介済みだ。

 本書は以下の構成。

【基礎編】 血管の内側から高血圧が見えてくる
(知ってるようで知らない高血圧/血管の壁が寿命を左右する)
【対策編】血管の壁を癒やして血圧を下げる
(減塩で下げる/減量で下げる/運動で下げる/節酒で下げる/禁煙で下げる/心身のリズムを整えて下げる/薬も使って下げる)
【抗老化編】 血管から若さを保つ
(肌を若く保つ―シワ、たるみ、シミ/髪を若く保つ―抜け毛、薄毛、白髪/EDを遠ざける/骨を若く保つ―骨粗鬆症/脳を若く保つ―物忘れ、認知症)

 高血圧のみならず、それが引き金になる生活習慣病や、老化を防止するための食事や運動、生活習慣の改善について解説している。

今は正常でも安心できない

 副題にあるように本書の特徴は、血管の内側に注目していることだ。つまり血管の壁。そのケアを心掛けないと、高血圧が悪化し、寿命にも影響すると説く。

 高血圧とは血液の圧力が高いということ。要するに、血管の壁にかかる圧力が高いということだ。血圧が高いと、血管の壁が受ける衝撃も大きくなる。そうなると、壁が劣化し、破れやすくなる。そこにコレステロールが侵入、壁の一部にカルシウムがたまって動脈硬化が進行する。このように高血圧は、さまざまな生活習慣病の入り口になっていく。 年齢が高くなると、高血圧の人が増える。動脈硬化が進んで、血管の中の血液が流れる部分が狭くなるからだ。狭いところをこれまでと同じ量の血液が流れようとすると、血圧は上がる。これは加齢とともに起きる避けられない現象と言える。しかし、個人差がある。100歳を超える長寿者は、85歳未満の高齢者に比べると、高血圧の割合が半分ぐらいしかないという調査結果があるという。血圧が高いと、老化が速く進み、寿命が短くなる傾向がある。

 以上からわかるように、血圧は、今はまだ高くなくても、加齢とともに、これから高くなることが考えられる。そのため早めに予防策を取り、生活習慣を整えておく必要がある。

「メタボ高血圧」を避ける

 一般に高血圧は「塩分を控える」ことが大切だと言われている。そのメカニズムも解説されている。人体には1リットルの血液に約9グラムの塩が溶けている。塩分をとりすぎると、人の身体は、血液中の水分を増やして塩分濃度を下げようとする。塩分の多いラーメンを食べた後、水を飲みたくなるのはこの理由だ。その結果、血液の量も増えるから、大量の血液が流れることで血圧も上がってしまう。逆に言えば、血圧を上げさせないためには減塩が大事だということになる。

 この辺りのことは、高血圧に関心がある人にとっては常識だろう。本書ではさらに「減量」について強調している。いわゆる「メタボ高血圧」を防止するためだ。肥満の人は、全身の細い血管が脂肪に押されて潰れた状態になっている。したがって強い力で血液を送り出すようにしなければならない。すなわち血管がダメージを受けやすい。

 本書は【対策編】でさらに細かくアドバイスしている。塩分を減らすことに留意している人は少なくないと思われるが、とくに「食いすぎ」をしないように呼び掛けている。腹八分目を心掛ければ、必然的に塩分量は8割に減るし、減量によって「メタボ高血圧」も抑制できる。

 そして、理想として、「20歳の時の体重に戻す」ことを提唱している。人間の体は20歳ごろに出来上がっており、それ以降に増えた体重はほとんどが余分な脂肪だという。 コロナ禍で「コロナ太り」になった人もいれば、「コロナ・ダイエット」に成功した人もいる。本書などを手がかりに、長生きの方策を理屈の上で知っておくことは長い目で見れば有益と言える。

 


 


  • 書名 血圧を最速で下げる
  • サブタイトル老化を防ぐ「血管内皮」の鍛えかた
  • 監修・編集・著者名奥田昌子 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2020年7月29日
  • 定価本体860円+税
  • 判型・ページ数新書判・240ページ
  • ISBN9784344985964
 

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