塩分を摂り過ぎると体によくない。これは今や常識となったようだ。特に高血圧の人は控えなさいと言われる。評者も高血圧を原因とする病気になったことがあるので、耳にタコができている。実際に毎日の食事でも塩分量に注意している。
本書『はじめての減塩』 (幻冬舎新書)は減塩生活をこれから始めようとする人への入門書だ。類書は山のようにあるが、編著者が東京慈恵会医科大学附属病院栄養部なので、安心して読める。
日本でも遅まきながら、「塩」が追い詰められているようだ。2015年に食品表示法が施行され、20年までに食品の成分表示に、原則として食塩相当量を記すことが義務付けられた。とはいえまだまだ「減塩後進国」だ。
最近、めざましい取り組みをしているのはイギリスだという。2003年の段階では、日本と似たりよったりの状況だったというが、その後、国を挙げて減塩に取り組んだ。パン、チーズ、ソーセージといった加工食品の塩分を4年かけて減らす目標値を設定し、メーカーが自主的に取り組むよう促した。その結果、11年までに国民1人当たりの塩分摂取量は1グラム以上減り、虚血性心疾患や脳卒中の患者が4割以上減少したそうだ。最終的にパンの塩分は20%減ったにも関わらず、多くの人は気づかなかったという。
いまのところ日本では、国が推奨する塩分摂取の目標値は成人男性で一日8グラム。世界保健機関のガイドラインは5グラム。国別に見ると、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが6グラム、イギリスは4グラム。
実際に日本の男性は平均で11グラムの塩分を摂っており、世界的にも高水準にある。健康には脂質や糖分も影響するので、塩分だけで一概に結論付けられないが、欧米よりも多く摂る傾向があるのは間違いない。
本書は「なぜ減塩なのか」「減塩のための食品知識」「今日からはじめる減塩生活」にわかれている。減塩食はおいしくないと言われるが、それは舌が濃い味に慣れているから。人間の舌は、濃い味にも薄い味にも対応できる。薄味になっても一週間で慣れるという。これは評者も同意する。逆に外食などの濃い味がきつくなる。
「みそ汁は一日一杯に」「塩分ゼロの調味料を使おう」「顆粒だしやコンソメに注意」「避けるに越したことはないインスタント食品」などの注意書きが並ぶ。いずれもよく言われていることだ。
平成24年の国民健康・栄養調査によると、食塩摂取量第1位の食品は「カップめん」、2位は「インスタントラーメン」。3位以下の漬物類を大きく引き離している。
NHKの朝ドラ「まんぷく」はインスタントラーメン開発話だった。試作品を食べ続ける主人公らの姿に、番組には「塩分摂りすぎ」を心配する声も寄せられたという。それだけ日本人の間で、「インスタントラーメン=塩分多い」という知識も広まって来たということだろう。
本書では「カレーうどんはなぜ要注意か」「それでもラーメンを食べたいという人へ」「油断できないコンビニおにぎり」などの注意書きもある。漫然とした食生活をしている人に一読をすすめたい。本欄では『健康格差――あなたの寿命は社会が決める』(講談社現代新書)も紹介している。当サイトご覧の皆様!
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