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足立区民は寿命が短い・・・たけしさんもびっくり!?

健康格差

 生まれ育った場所や住んでいるところ、職業などで健康状態に違いが生じることをわかってはいても、わたしたちは自身の健康は自己責任の問題と考えがちなのではなかろうか。それが近年、所得により受けられる医療に差が生じるといったこと以外に、居住地や雇用形態、家族構成などの違いで病気に対する抵抗力や寿命に変化があり、自己責任ではどうしようもない格差が広がっているという。

 NHKスペシャル取材班による「健康格差 あなたの寿命は社会が決める」は「低所得者の死亡率は高所得者の3倍高い」などの実情を伝えるとともに、そうしが格差是正のために行われている自治体の取り組みなどをレポートしている。

低所得、不安定な雇用が健康リスクを増大

 Nスぺ取材班は年金や雇用、介護の問題や少子化などさまざまなテーマに取り組んできたが、こうした問題のほとんどすべてで、根本に健康格差がかかわっていることが分かったという。健康格差については2016年9月に総合テレビで放送され大きな反響があり、もっと多くの人にこの問題を知ってもらおうと書籍化された。

 健康格差は、日本だけではなく世界的な規模で生じており、世界保健機関(WHO)ではその解消のための対策を各国に求めている。WHOでは格差が生まれる要因として、所得、地域、雇用形態、家族構成の4つが背景にあると指摘している。とくに所得や雇用形態などで経済力にかかわるものの影響は大きく、低所得、不安定な雇用が健康リスクを増大させている。

 その顕著な例は「2型糖尿病」の若い世代での発症の増加。異変に気づいた医師はこう述べる。「生活習慣病とされる2型糖尿病は通常なら40代以上がかかる病気でしょう。ところが、立て続けに合併症を起こした若い患者さんを診たわけです。こんなことは、滅多にないわけですから、これは何かおかしい、何か起こっているんじゃないかと思ったわけです」

 この医師の患者の一人の40代の女性は30代の時に発症。非正規雇用でゆとりのない生活のため治療をしないまま過ごし合併症から腎不全を併発、視力も極端に衰えてしまった。

 糖尿病ばかりではない。精神疾患、肥満、歯周病なども暮らす環境などの違いにより若年化、重症化が著しくなっているという。

減塩なかなかできない秋田県

 地域によっても格差がうまれている。東京都内の地域別「健康寿命」をみると、足立区のそれは男女とも東京都の平均より約2歳も短いことが調査で判明。東京都平均は全国平均とほぼ同じなので、足立区民は全国平均より2歳健康寿命が短いことになる。足立区民の平均年収は東京23区で最も低いことがわかっており、この地域による健康格差も根本には経済的な要因があるとみられ。

 足立区では2013年から健康格差解消を目指す取り組みをスタート。そのなかには区民に野菜の摂取をよびかける「ベジ・ファースト」「ベジタベライフ」の運動が盛り込まれているのだが、飲食店の積極的参加が得られるなどして、4年間で区民1人当たりの野菜摂取量を年間で5キロ増加させるという成果を挙げている。

 しばしば健康との関係で取りざたされる塩分摂取をめぐって対照的な2例を紹介。一つは秋田県からで、県民の塩分摂取量の多さを指摘し、それが原因とみられる病気になってもなお塩分を控えられない実情とその理由をレポートする。もう一つは英国から。国をあげての減塩プロジェクトが成功し、8年間で心筋梗塞と脳卒中の死亡者数を激減させ医療費削減にも貢献したのだが、プロジェクトを軌道に乗せた同国食品基準庁の手際を追う。

 足立区の例や塩分をめぐっての2例からも、健康格差解消のためには、個人の自己責任やリテラシーの向上に依存することなく、組織ぐるみ、社会ぐるみで環境を整えることに力を注ぐべきことが分かる。

(BOOKウォッチ編集部)
  • 書名 健康格差
  • サブタイトルあなたの寿命は社会が決める
  • 監修・編集・著者名NHKスペシャル取材班
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2017年11月15日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書・200ページ
  • ISBN9784062884525

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