「兵士を救え! マル珍軍事研究」。「マル珍」は正しくは「〇」のなかに「珍」だ。海に落ちたときにサメに食われないために...、危険な任務中に下痢になったらどうするか、はたまた、任務で傷ついたペニス再建手術はできるのか...。
戦争に派遣された米軍兵士たちを危機や負傷から救うため、あるいはそれらを未然に防ぐため、日夜行われている研究を「全米一愉快」ともいわれるサイエンスライターの著者が突撃取材を重ねてレポートしている。
著者のメアリー・ローチさん(58)は、20代のころにローカル紙への投稿を機に全米規模で発行されるメディアで活躍するようになった科学ジャーナリスト。日本ではこれまで「死体はみんな生きている」(2005年)「霊魂だけが知っている」(06年)「セックスと科学のイケない関係」(08年)などの著作が翻訳出版されている。
「セックスと科学のイケない関係」でローチさんは、タブーとされるような「性の謎」や「性の追究者たちの情熱」について挑んで注目され、09年の世界的講演会「テド・カンファレンス(TED Conference)」では、同書の著者として「あなたの知らないオーガズムに関する10の事実」について講演。インターネットで動画配信され反響を呼んだ。
本書でもローチさん特有のチャンレンジ精神はしっかり発揮されている。
兵士が派遣される戦場には地雷など爆発物が埋められている場所があり、そうしたところに立ち入り、局部――つまりペニスだが――を損傷する可能性がある。そうした場合のケアにも余念はなく、根本的に失われた場合でも対処法が用意されている。人工的にこう丸や神経を造ったり育てたりすることで子孫づくりやオーガズムの復活が可能になっているそうだ。ローチさんは科学ジャーナリストとして詳しくそのもようを報告している。
兵士らのこうした被害を防ぐためにも戦場で何を身に着けたらいいのかというのは、最重要課題の一つだ。研究の歴史のなかでは、近年の日本でもとりざたされている「赤い下着」の超自然的効果が注目され、兵士らに着けさせ効果を確認する研究が行われたという。だが汗による色落ちが激しいなど兵士らは不快感に悩まされただけだった。
この赤い下着研究など、兵士のための衣食住の研究を行っているのは米陸軍の機関「ネイティック研究所」。マサチューセッツ州ネイティックにあり、これまでにも「戦争が作った現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係」(白揚社)で紹介され、同研究所で開発された兵士の携行食品などのための技術が、わたしたちの食生活に応用されていることが明らかにされた。プロセスチーズやレトルト食品、缶詰、フリーズドライ製品などがそれだ。
軍事用に開発されて民間で活用されているのは食品ばかりではない。インターネットやGPSのように社会インフラとして現代の生活に欠かせない存在になっている例も多い。「マル珍軍事研究」のなかにもそうした候補が少なからずありそうだ。
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