2016年9月24日、ツイッターに「I need peace(わたしは平和が欲しい)」というツイートが寄せられた。書いたのはシリアのアレッポに住む7歳の少女バナ・アベド。世界中からメッセージが届き、フォロワー数がどんどん増えていった。もっとも反響を呼んだのは「わたしの名前はバナ。7歳です。わたしは今、東アレッポから世界に語りかけています。生きるか死ぬか、これが最後の瞬間です」というツイートだった。フォロワーは36万人を超え、各国の首脳らと直接ツイートするようになり、雑誌「タイム」が2017年の「インターネットで最も影響力のある25人」にも選ばれた。現代の「アンネ・フランク」と呼ばれるようになった彼女が書いたのが本書『バナの戦争』である。
まだ戦争がなかった幸せだった頃の日々の回想に始まり、やがて戦争に苦しむ日々の様子が書かれるようになる。驚くのは彼女が爆弾の種類をいろいろ知っていることだ。音で種類が分かるというのだ。7歳の子とは思えない鋭い観察眼で戦闘下の厳しい生活を描いている。
弁護士の父親とも一時離れ離れになり、一家はシリアを脱出、トルコの難民キャンプで暮らすようになった。母親の手記もところどころに挿入されており、一家の苦難がよく分かる構成になっている。
本書の扉写真にはがれきとなった建物に前に立つバナが写っている。小さな少女だ。有名になった彼女は2017年10月にはニューヨークの国連本部を訪問した。今もツイッターで、シリアでの戦争が終わるように訴えているという。
アンネ・フランクの時代と違い、戦争のさなかでも、人々は世界とSNSでつながっていることを実感する。いま彼女は8歳になった。誕生日を迎え、ケーキのろうそくの火をふき消そうとする写真が最後のページに載っている。安らかな日々が再び訪れることを祈るばかりだ。(BOOKウォッチ編集部)
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