読むべき本、見逃していない?

胃カメラとバリウム、どっちで検査する?

医者が教える 正しい病院のかかり方

 本書『医者が教える 正しい病院のかかり方』(幻冬舎新書)は、「医者と病院のトリセツ」だ。「多くの人から信頼される現役医師」が、風邪からがんまで、知っておくと得する60の基本知識を解説したもの。

 「医者が教える」というと、何となく上から目線を感じるかもしれないが、著者の山本健人さんは2010年に京大医学部を卒業したばかり。まだ若い。在学中の知識と、医者になってからの経験をもとに、患者に近い目線で基礎的な医療情報を説明する。

「後医は名医」なり

 本書の特徴は、「医者の常識」を分かりやすく示していること。例えば「後医は名医」。最初に診た医者よりも、後から診る医者が有利だという。山本さんの子どものころの経験を紹介している。腕にブツブツができた。近所の皮膚科に行って、軟膏を処方されたが、よくならない。そこで医者を替え、隣町の皮膚科に行き、別の薬を塗ったら治った。常識的には、最初の医者がヤブ、二人目の医者が名医ということになる。

 しかし、実は違うのだという。二人目の医者は、最初の医者が処方した薬が効かなかったという情報を持っている。その上で別の薬を処方している。診断する上で、二人目の医者のほうが有利になっている。「後医は名医」になりやすいのだという。

 これにはさらに補足がある。そういえば最初に山本さんを診た医者はこう言っていた。「この薬を塗ってよくならないようなら、また来てください」。つまり、最初の医者の所にもう一度行くと、別の薬を処方され、よくなった可能性もある。逆に二人目の医者が、最初の医者の処方について十分な知識を持っていなかった場合は、一からやり直しになる。この場合は「後医は名医」にならない。

 このように医者と患者の関係はなかなか複雑だ。本書は、医療に関する様々な疑問をあまり単純化することなく、冷静に読者に伝える。

ネットの健康情報は「キーワード+or.jp」で検索

 本書は「第一章 病院に行く前に」「第二章 医師との関係に悩んだら」「第三章 がんについて知っておくべきこと」「第四章 いざというとき」「第五章 薬の知識」「第六章 知っておきたい家庭の医学」の6章構成。

 それぞれの章でさらに様々な疑問が並んでいる。「治療しても同じ症状が続くときは病院を替えるほうがいいか」「目の前でスマホ検索する医師は信用できないか」「胃がん検診は胃カメラとバリウムのどちらを受けるのがいいか」「がんは切るべきか切らざるべきか」「薬局で買える薬と病院で処方される薬は何が違うか」「生活習慣病の薬は一度飲み始めるとやめられないのか」「病院で処方される風邪薬の方が市販薬より効くか」など60問だ。

 例えば、病院に行く前に患者や家族がネットで検索することについて。著者は、ネットの医療情報は間違いだらけだと警告する。専門家が医療系サイトを調査したところ、医学的に根拠がないページが4割に上ったという。

 もちろん信用できる情報もある。がんについての情報なら「国立がん研究センター」の「がん情報サービス」、消化器に関する情報なら日本消化器病学会の「患者さんとご家族のためのガイド」。ネットで調べるときは、検索したいキーワードの後ろに「or.jp」をつけると、信頼度が高い学会や公的機関のサイトが優先的に表示されるそうだ。著者自身も「外科医の視点」というサイトで確かな情報発信に努めている。

風邪薬に「風邪を治す力」はない

 検査には「偽陰性、偽陽性」という限界があるという話も。例えばインフルエンザにかかっている患者を100人検査しても、初日の検査で陽性と判定できるのは61%だという。二日目になると92%まで上がる。逆に陰性の人を陽性と判定してしまうこともある。検査結果を他の身体症状と合わせて総合的に判断する必要がある。インフルエンザの場合は、それでも精度が高い検査なのだという。

 認定医、専門医、指導医という医者の肩書についても注釈している。これらの肩書を得るには学会に入り、一定の症例をこなし、論文を書いて、認定試験に受かる必要がある。受験料も高い。これが面倒だという医者は、臨床に専念しているケースもある。いちがいに肩書がある医師が優れているとは言えないという。

 自治体の検診は「積極的に受けたほうがいい」、すい臓がんは厄介だが、この10年の間でも「治療は教科書が書き換わるくらい大きく変化している」、風邪薬に「風邪を治す力」はない、病院でしか処方できない「風邪の特効薬」はない、「がん治療は、シンプルに語れないほど複雑」など、風邪からがんまで患者の多様な疑問に答えている。

 医療の世界は数学のように答えが一つではない。裁判のように、シロクロの決着を強引に決めるわけにもいかない。多数の要素があり、正解にたどり着く道が複雑だ。その解も、今は正しくても後になったら間違っているかもしれない。本書は、そうした迷路のような世界で、「妥当な解」をいかにして見つけるか、医者の立場から合理的な思考をもとに示したものと言える。常識的な医者の本音を知ることができる患者にとってはありがたい一冊だ。

  • 書名 医者が教える 正しい病院のかかり方
  • 監修・編集・著者名山本健人 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2019年11月28日
  • 定価本体880円+税
  • 判型・ページ数新書判・272ページ
  • ISBN9784344985797

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