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「ようやくがんに...」とうとう始めた病気自慢

病気自慢 からだの履歴書

 エッセイスト、画家である玉村豊男さんは、ワイナリーを経営し料理研究にも余念がないなど食にも詳しい。自慢のタネは尽きないだろうと思いきや、新著で誇らしげに披露しているのは意外なことに自らの不健康ぶり。『病気自慢 からだの履歴書』(世界文化社)で、これまで36年間に経験した14回の入院をなどを軽妙のタッチでつづる。病気自慢は、裏を返すと克服自慢。数々のトラブルを乗り越えたノリで「終活」を始めている。

36年間に14回入院

 玉村さんは1945年10月生まれで今年73歳を迎える。本書ではいきなり「私は37歳から72歳までの36年間に、8つの病院に14回入院しました」と切り出す。1986年から、輸血によりC型肝炎に悩まされていたが、古希となる2015年に、前年に登場した新薬により2週間で完治。ワイン造りやテニスにいっそう精を出せるところだったが、その翌年、肝臓がんが見つかり治療中という。

 「病気自慢」とタイトルを付けた本書ではあるが、著者はこれまで、病気を自慢することなどは、病気に悩む人たちに申し訳ないと考えていたが、がんが判明し病気を自慢する資格を持てたと思い「ようやくがんになった」と遺言とともに病歴報告を書く心境になったという。

 葬式も戒名もいらないという著書の遺言は「遺骨は、ブドウ畑に散骨してもらいたい」というもの。東京生まれの玉村さんは都内で文筆活動していたが、30代の後半に長野・軽井沢に住まいを移し、40代以降に、県内の別の場所に移り農園やワイナリーを手がけている。玉村さんの育てた信州ワインの評価は高く、伊勢志摩サミット(16年)の晩餐会で各国首脳をもてなした。いつまでもそのワインとともにありたいということか「散骨する場所は、1992年に植栽したヴィラデストのいちばん古いブドウ畑に」と念を押す。

 「私の骨のカルシウムが加われば、その年以降のヴィンテージはおいしさも一段と増すに違いありません」と著者。重ねてきた病歴の影響はないと考えているようだ。そればかりか、収穫されたブドウで作ったワインは「『玉村豊男粉骨砕身畑』の特別バージョンとして、ふつうのリザーブより少し高く売ってもいいかな」と期待を寄せている。

 玉村さんが最初に入院したのは37歳のとき。病気ではなく交通事故にあったためだった。14回の入院のうち重症だったのはこの事故のときと、42歳のときに経験した原因不明の大量吐血だったという。このときに受けた輸血で肝炎にかかったものだ。

 ほかに、アレルギーや胃かいよう、糖尿病、外反母趾、インプラント、白内障など豊富な克服歴(?)を披露。これら、自分が経験した病気は健康上のトラブルなどをいとおしむような調子で振り返る。16年に見つかった肝臓がんは「神の手」といわれる医師による「ラジオ波焼灼術」で処置されている。玉村さんは画家としても活動しているが、絵を描くようになったのは病気になったときに退屈しのぎで始めてからという。

 病気や不調に見舞われてなお忘れぬ諧謔精神や前を向く気持ちが清涼感を運んでくる。

  • 書名 病気自慢 からだの履歴書
  • 監修・編集・著者名玉村豊男 著
  • 出版社名世界文化社
  • 出版年月日2018年1月16日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数B6判・224ページ
  • ISBN9784418185009

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