インターネット時代の近年は、旅行の宿泊先を選ぶことがますます容易になっている。比較サイトの登場で、候補の施設のページをいちいち参照しなくても済むにようになった。そして、かつては客集めを旅行代理店などに依存していたホテルや旅館はもてなしに工夫を凝らしてアピールするが、価格がメーンのフィルターになりがちなネットを通しては、利用者のレベルに響いているとはいえないようだ。
本書『最強のホテル100』(イースト・プレス)は、1年365日間毎日ホテルにチェックインし続けたこともるというホテル評論家の瀧澤信秋さんが、これまで訪れた2000を超える施設のなかから「また行きたい」とセレクトした100か所を紹介。フルサービスのラグジュアリーホテル、高級温泉旅館からカプセルホテルまで、ジャンル横断的に、著者が最強と考えたサービスを提供していう施設をリストしている。ゴールデンウイーク、夏休みのレジャーの参考にもなる。
本書の最初のセクション「私が選ぶ最強ホテル」には9つの施設をピックアップ。その筆頭に登場するのは、東京・日本橋室町の39階建てタワービルの30階から上を占める「マンダリンオリエンタル東京」だ。「マンダリンオリエンタル」といえば「シャングリラ」「ペニンシュラ」と並ぶアジアの高級ホテルチェーン。「東京」は2005年に開業し、日本で初めて「フォーブス・トラベルガイド」の最高評価である五つ星を獲得している。著者ならずとも「最強ホテル」一つと認めるところだろう。
本書を開いた当初は、よくあるホテルのカタログブックかとも思わせたが、読み進めると「マンダリン」をリストした「最強ホテル」セクションに「豪華カプセルホテル」や、今では「レジャーホテル」と呼ばれる「おこもり」デート用の施設があらわれ虚をつかれる。いよいよ、著者ならではの隠れた最強ぶりを掘り起した報告が始まった。
カプセルホテルといえば、終電に乗り遅れたサラリーマンのシェルター的な存在というのが相場のイメージなのだが、紹介されているのは「カプセルはスクエア型の広々空間で出入りもラクラク。寝具はシモンズ共同開発のマットレスや羽毛布団と羽毛枕を採用している」という、まさに豪華版の都内の施設。シモンズは高級ベッドが主力の寝具メーカー。納入先は高級ホテル、百貨店であり、著者は「"カプセルにシモンズ"である」と驚いてみせる。
「最強」の一角に食い込んだ(?)レジャーホテルは東京郊外の施設。「いずれの客室も調度品やリネンの質感、アメニティのクオリティに至るまで一流ホテルの趣」という。またルームサービスの質の高さにも目を見張るものがあり「確かな食材でグルメなゲストを唸らせる」ほどで、著者からお墨付きを得た。
近年の宿泊施設のトレンドの一つに、ビジネスホテルチェーンの拡大が挙げられる。外国人客の増加はたびたび指摘されているが、国内の宿泊旅行も近年は右肩上がり。観光庁の報告によると、2016年の国内宿泊旅行者数は前年比4.0%増の3億2566万人。15年は3億1299万人で、こちらは前年比5.3増だった。この波を作りだしたのか、あるいは乗ったものなのか、各チェーンはビジネスマンの出張向け仕様から家族連れ女性グループが利用しやすいよう設備やサービスを見直し、天然温泉や品数をそろえた朝食バイキングを用意してニーズに応えようとしており、本書でその進化ぶりの一端がうかがえる。
ビジネスホテル本来のミッションである出張需要対応も忘れられてはいない。各店で無料で、一杯やったあとのシメとなる「夜食ラーメン」を提供するチェーンがあるという。本書では同チェーンの2か所の施設をエントリーしている。
近年の国内旅行トレンドのもう一つを担っているのが「365日同一料金、低料金」をうたう温泉旅館チェーン。著者はその一つを「最強」カテゴリーに入れて紹介する。「食材のクオリティが高く、宿泊料金からするとにわかに信じられない充実の内容」という。「安かろう悪かろう」とはもう言わせない?
本書では「私が選ぶ最強ホテル」のほか「デラックスホテル」「アッパー進化系&ビジネスホテル」「リゾートホテル」「温泉ホテル&旅館」「簡易宿場&レジャーホテル」のセクションを設けて、それぞれの「厳選」施設を紹介。イメージを重視して写真が大きく使われている。ほかに日本のホテル史を彩ってきた「御三家」「新御三家」「新新御三家」についてや、予約のタイミングなどを述べたコラムなどが収められており、見て読んで旅を楽しめる。
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