著者の長崎尚志さんは、「ビッグコミックスピリッツ」編集長を務めたマンガ界のヒットメーカーとして有名だ。独立後も原作者、プロデューサーとしてマンガにかかわってきた。その長崎さんの3作目の小説が本書『編集長の条件』(新潮社)だ。
主人公の醍醐真司はフリーのマンガ編集者。ある出版社から月2回刊のマンガ雑誌の編集長のポストを打診され、1年契約で引き受ける。雑誌の刷新による売り上げ増がミッションだ。前任の編集長・南部は自殺とも事故死ともとれる不可解な死を遂げていた。
新編集長の醍醐は編集者やマンガ家とやりとりし、いかに南部が嫌われていたかを知る。マンガへの情熱があり過ぎて、他人を攻撃するしかないタイプだった。うらみをかって殺されたのでは、と探り始める。女性探偵の水野優希もこれに協力する。
南部には「絶対に勝てる大人向けマンガ雑誌」の企画書があったという。真相を探るうちに、マンガ雑誌から貸本マンガ、さらに紙芝居まで、マンガの歴史をさかのぼる。さらに戦後最大の謀略事件とされる「下山事件」までからみ、事件は単純な怨恨が原因とは思えない複雑な様相を呈する。
長崎さんは週刊文春(2018年3月22日号)のインタビューで「マンガ編集者はマンガ家の伴走者で、作品を一緒に作り上げるもの」と答えている。本書には、そんなマンガをめぐる、濃密な人間模様が描かれている。たしかにマンガには編集者が実名で登場することがある。小説ではありえないことだ。著者のマンガへの愛に満ちた作品だ。
当欄でも『少年ジャンプが1000円になる日』を紹介したばかりだが、いまマンガ雑誌、コミックス単行本の売り上げは年々減っている。そんな業界事情が本書の根底にもある。
さらに本書でもメディアミクスが追求される。衛星放送のWOWOWで連続ドラマ化され、「連続ドラマW 闇の伴走者~編集長の条件」として3月31日(2018年)スタートする。醍醐には古田新太、優希には松下奈緒が扮する。あて書きではないが古田が醍醐そっくりの容姿なのが驚きだ。
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