コロナ禍により、日本の経済はどうなるだろう? と心配している人は多いだろう。本書『コロナ大不況後、日本は必ず復活する』(宝島社)は、経済学者の高橋洋一氏が「50兆円以上の財政出動をすれば、絶対に日本経済は復活する」と国民を鼓舞する内容の本だ。
著者の高橋氏は現在、嘉悦大学教授。東京大学理学部数学科と経済学部を卒業後、大蔵省入省。総理大臣補佐官付参事官などを歴任した。
「第1章 新型コロナウイルスは収束するのか?」「第2章 トリプルショックの日本経済」「第3章 ショボい財政出動ではダメだ!」「第4章 コロナで進む中国の野望」「第5章 オリンピックで日本経済は復活する」「第6章 日本経済はどう変わるのか?」という構成。
最初に高橋氏はコロナウイルスの感染症対策として、休業などによる経済コスト100兆円を民間が負担した場合、失業者が200万~300万人発生し、それによる自殺者が1万人程度と予測する。
民間ではなく、国が負担すればいいのだと説く。
「移動制限などに伴うGDP減少を、休業補償や現金給付、減税等のマクロ経済政策による政府需要増加で補うことにほかならない。そして政府が100兆円の基金をつくり日銀が買い取ればいい。無制限緩和をするのだからできるはずだ」
そんなことは可能なのか。高橋氏はこう書いている。
「いまはマイナス金利の時代なので、事前に(国債を)発行して基金を作っても利払い負担はない。それどころか、マイナス金利なので、逆に収入がある」
そうすれば、どういうことができるのか?
「一人当たり10万円の給付も、2回、3回にわたって行うこともできるし、中小企業の休業補償も手厚くできる。それによって、コロナ・ショックの先行き不安を感じている国民の懸念も払拭できる」
政府が4月に出した108兆円の緊急経済対策に対しては、「真水は10兆円ほどしかないのに、GDPの20パーセントもお金を出すと思わせる虚構を見せた。でも、こんなものはすぐばれる」と批判する。先日成立した第二次補正予算についても、使い道がどうなのか、注視しなければならない。
諸外国の経済対策にもふれている。アメリカは中小企業融資だけで3500億ドル。日本円にして38兆5000億円。融資といっても雇用を維持した場合には返済不要だから実質給付と変わらないという。ほかに失業保険に20兆円など。ドイツは91兆円。GDPは日本よりも小さいのに規模は大きい。イギリスは二度の経済対策で規模は45兆円5600億円だ。イタリアを除いて、自由主義各国は日本を超える規模の経済対策をしており、「日本がショボいのだ」と批判する。
緊急経済対策の後は、「消費税減税を」と訴える。それも8%ではなく、インパクトのある5%まで引き下げるべきだと。
「安倍政権の前には、消費税率は5%だった。安倍政権の責任として、2回で計5%の消費税率を引き上げたのだから、今度は、それを政治責任として、時限的に5%まで引き下げるのは一つの選択肢だろう」
消費税減税によって「消費の復活を」と訴える。
コロナ後の日本経済については、テレワークに注目している。地方への移住の動きもあるが、とりあえずは自宅のワークスペースの確保が課題だと見ている。ノートパソコンや椅子などに新たな需要がありそうだ。
オリンピックの経済波及効果は32兆円になると見込んでいる。逆の場合はどうなのか。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算を紹介している。延期の場合は6408億円の損失、中止の場合は4兆5151億円となる。
オリンピックが開催されれば、新たなインバウンドの始まりになる、と期待するが、「すべていまの新型コロナウイルスの収束が前提になる」と釘をさしている。
すべては夏以降のコロナウイルスの感染状況にかかっているようだ。
BOOKウォッチでは、ポストコロナの経済対策については「打つ手なし」という『貧乏国ニッポン――ますます転落する国でどう生きるか』(幻冬舎新書)などを紹介している。
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