外出自粛、在宅勤務により家で過ごす時間が増えた結果、「食費が増えた！」という人々の声をよく耳にする。買い出しの前に必要なものをリスト化する、タイムセールの時間帯を狙うなど、節約を意識してスーパーに向かう人も多いだろう。
そんな中、これまで以上に注目されているスーパーがある。緑色に大きな白い文字の看板が覚えやすい業務スーパーだ。5月20日付の日経新聞には、業務スーパーを展開する神戸物産が「コロナで食材販売伸長 業績予想を上方修正」と出ていた。
本書『業務スーパーやみつきレシピ―― 1食99円激安スペシャル』（宝島社）は、業務スーパーの食材を使った簡単・安い・うまいレシピ65を掲載。すでに業務スーパーを利用している人にとっては、こんな食材もあったのかと豊富な品揃えを再発見できる。近場にあるけど行ったことがない人にとっては、食材調達先の選択肢が一つ増えるだろう。
コロナ禍でいっそう需要が伸びている業務スーパーとは、一体どんな特徴があるのか。2000年、兵庫県三木市に第1号店オープン。今年1月時点で全国850店舗を超えるまでに拡大。確立された神戸物産グループの製販一体体制を基盤に、さまざまなオリジナル商品を販売。輸入品も大量に仕入れることによって、「世界の本物」の商品をベストプライスで提供している。
「業務」とついているだけあって、「食のプロ向けの高品質な業務用食品を低価格で扱うスーパー」である。それがここ数年、メディアやSNSで取り上げられる機会が増えて認知度が高まり、「プロの品質とプロの価格」を気軽に味わえるスーパーとして一般の人も多く訪れるようになった。
本書はほぼレシピのページで構成されているが、業務スーパーの「秘密」を知ることができるページがわずかにあり、そこが興味深い。そもそも、なぜこんなに驚異的に安いのか？ 多くの人が感じているであろう素朴な疑問だが、そこには5つの「秘密」が隠されていた。
1 自社ですべて担う！
2 世界中からまとめ買い
3 仕入れコストを極力削減
4 ムダ・非効率を徹底的に排除
5 自社オリジナル製品がたくさん
中でもなるほどなと思ったのが、「紙のチラシは配布せず、広告はウェブチラシがメイン」という話。たしかに、認知度があり、店と客の信頼関係が構築されていれば、チラシを見なくても客は期待感を持って集まってくるのだろう。
本書は5つのPARTに分けて、5人の料理家による65のレシピを掲載している。「簡単！」と謳っているだけあって、基本的にそこまで手がかかりそうなレシピはない。揃えるものも、業務スーパーの食材だけでOKという。各レシピの「メイン食材」は、商品名、容量、価格を写真付きで紹介している。なお、掲載レシピの材料費を平均すると「1食あたり99円」となる。
■PART1 定番メニュー
豚バラ肉のはちみつチャーシュー／お手軽ポテトサラダ（冷凍フライドポテトを使用） ほか
■PART2 がっつり！ 肉＆魚おかず
揚げないロースカツ／じゃがチーズワンタン揚げ
■PART3 野菜・きのこ・豆おかず
さといもとひき肉の豆乳みそグラタン／マーボーはるさめキャベツ ほか
■PART4 ご飯・麺・パン
南イタリアの田舎風ツナリゾット／ミートソースうどん ほか
■PART5 スイーツ・ドリンク
ブルーベリークリームのデザートパン／クラッシュコーヒーゼリー ほか
ここでは、暑くなるこれからの季節にピッタリ、かつお腹にしっかりたまる「缶詰で簡単！ 時短カレー」を紹介しよう。作り方はたったの4工程。
1 玉ねぎを薄切りにする。オリーブオイルをひいた鍋で透き通るまで中火で炒める。
2 カットトマト缶詰、さば水煮缶詰、おろし生しょうが（チューブ）・バター・酒を加えて強火にかける。フツフツしてきたらふたをして、弱火で15分。
3 カレールウをまな板で粗く刻んで加え、とろみがつくまで中火。
4 皿にご飯を盛り、ルウをかける。
生肉ではなく缶詰2つ、しかもトマトとさば。手間がかからず、しかも新鮮な組み合わせ。マンネリ化した日々のメニューに加えたいところだ。なお、このレシピではメイン食材として「カットトマト缶詰」を紹介している。
本書を読んで、ニュースなどで見たコロナ禍における全国各地あらゆるスーパーの対応を思い返した。日常が非日常になり不安な日々を過ごす中、商品が陳列された棚、明るく接客してくれる店員さんを見て、評者も心底感謝した。スーパーという存在のありがたみに、改めて気づくこととなった。
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