人と人との距離をとる、外出時はマスクを着用する、家の中でも咳エチケットを心がける、換気を十分にする、十分な睡眠などで自己の健康管理をしっかりする――。これらは、首相官邸ウェブサイトにある「一人ひとりができる新型コロナウイルス感染症対策」である。この中で睡眠については、わたしたちがもともと当たり前にしているからだろうか、メディアで言及される機会は比較的少ない気がする。
睡眠コンサルタント・友野なおさんの本書『眠れないあなたを救う「睡眠ファースト」』(主婦の友社)はコロナ対策を念頭に置いたものではないが、自分は「十分な睡眠」をとれているか気になる人に、ぜひ読んでほしい一冊。「睡眠ファースト」の生活がもたらす「楽になる、きれいになる、育児や仕事もうまくいく」というメリット、不眠から脱却する具体的な方法を、簡潔な文章とイラストでわかりやすくまとめている。
著者の友野なおさんは、株式会社SEA Trinity代表取締役。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程で睡眠を研究し、修士号を取得。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会正会員。科学的なエビデンスを基本とした行動療法からの睡眠改善により、主に企業向けの睡眠研修やコンサルティング・健康・美容市場の商品開発などを行っている。
「寝ることはもったいない。寝ることに罪悪感を覚える。寝ることは怠けている、生産性のないムダな行為だ」――。著者はかつて、少しでも休んだら周りに置いてきぼりにされてしまう......という焦りや不安、恐怖にも近い感情に縛られ、必死に走りつづけていたという。
しかし、20代の終わりに「ぷつんと糸が切れたように体調をくずし」、「金なし、職なし、恋人なしという、人生のどん底」に。体重は増え、アトピー性皮膚炎は悪化し、月2回風邪をひき、生理は来ず、パニック障害に苦しむなど「心身ともにボロボロ」だったという。
そんなとき、「一度ゆっくり寝てみたら?」という母親の言葉をきっかけに、睡眠優先の生活を開始。その結果、一年で10kg落ち、アトピーなども改善。このことを科学的に理解し、証明したいと考え、睡眠をサイエンティフィックに学び研究する道を選んだという。いまでは2人の子どもに恵まれ、収入は10倍以上に増え、人生が「180度好転」したという。
「睡眠の質は人生の質そのものです」
本書は6つのPartからなり、5分でできる安眠ワザ、一日のサイクルを睡眠優先にする生活改善法、意識改善術など、今日からできる眠れるようになるコツを紹介している。
Part1 睡眠ファーストにすると人生は明るく輝く
Part2 5分でできる眠りの準備
心療内科でも行われる筋弛緩法はたった10秒でOK/眠れない焦りをほぐす「スリープヨガ」 ほか
Part3 わかると眠れる睡眠メカニズム
眠り始め3時間で分泌する成長ホルモンは、最強の美容液/ダイエットしたかったらまず眠る。睡眠不足はドカ食いに直結 ほか
Part4 逆算スケジュールで賢く眠る
朝日を浴びた14~16時間後おやすみ予約スイッチが入る ほか
Part5 眠りを深める脱ストレス法
人間関係を壊しやすいから夜のメール送信はしない ほか
Part6 幸せになる眠り
ここでは新型コロナ関連で気になった「Part3」の「睡眠時間7時間以上の人は風邪をひきにくくなる」を紹介しよう。米国の研究チームが行った実験では、睡眠時間が7時間以上の人に比べて、6時間以下の人は4.2倍、5時間以下の人は4.5倍も風邪をひきやすくなるという結果が報告されたという。
「睡眠不足で免疫力が低下すると、感染症にかかるリスクが高まるというわけです」
また、たとえばインフルエンザの予防接種を受けても、睡眠時間が短い人は体の中でつくられる抗体の量が少ないため、ワクチンの効果が薄れてしまうこともわかっているという。日中の生活の質を上げるなら、「睡眠ファースト」にして免疫力をアップさせることが大切、としている。
次に「Part5」の「5大お片づけをして、睡眠時間を確保する」から。仕事でも恋愛でも「なんだかうまくいかない」と感じ、「この流れから抜け出したい」「立て直したい」と思ったら、次の5つを片づけて、眠る時間、休む時間を確保するのがいいという。
1 時間......時間の使い方を見直してみる
・まず気づく(一日の終わりに、今日一日の「行動表」を作る)
・やらないことリスト作り
2 人脈......自分にとって本当に必要なものだけを選び取る
・SNSをやめる(難しければ、通勤電車の中だけなどに制限する)
・目的のない会合には行かない
3 心......もっと「今」に集中してみる
・「マインドフルネス瞑想」
4 情報......デジタルデトックスのすすめ
・一定時間、スマホやタブレットの電源をオフにする
5 部屋......空間と気持ちはつながっている
・いらないものを捨てる(「捨て時」を逃さない)
・ものを増やさない(「本当に必要?」と何度も自分に問いかける)
これらはわたしたちの生き方に直結する重要な項目だろう。最後に一つ、幸せになる方法「アファメーション」にふれておこう。これは「自己実現のためのおまじない」のようなもの。「なりたい理想」「かなえたい夢」を口に出して言うことで、ポジティブな思考方法に変わるという。潜在意識が全開になっている夜寝る前に行うのが効果的、としている。ポイントは3つ。
1 一人称をつける
2 現在形で、すでに実現していることとして言う
3 肯定的な言葉で言い切る
このとき「私は~になりたい」と言ってしまうと、逆に「私は今は~ではない」というイメージが脳に刻まれ、前に進む力が弱くなってしまうため、「私は~しています」と言い切り、最後に「ありがとうございました」と感謝するのがいいという。
睡眠は毎日の習慣だからこそ、適当に、無意識に、雑にしてしまいがち。本書の睡眠のコツを一つずつ試して「睡眠ファースト」の生活に変えていくことは、感染症対策になるとともに「人生の質」を上げることになりそうだ。
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