疲労・肥満・不眠・不安・不調・老化のうち、どれか1つにはあてはまる人が大半だろう。「実はすでに!! あなたの体も文明病にむしばまれているんです!!」ということかもしれない。
累計10万部のベストセラー『最高の体調』(2018年)は、科学ジャーナリスト・鈴木祐さんが「進化医学」のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法を説いたもの。そこから「これをやっとくのが最も効果量が大きい!」という技法を厳選し、まんが化したのが本書『まんがでわかる 最高の体調』(ともに、クロスメディア・パブリッシング)である。
「この本の目的は、あなたの日々の不満や不調を根こそぎ解決し、あなたが生まれ持つ最大のパフォーマンスを引き出すお手伝いをすることです」
著者の鈴木祐さんは1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文を読破、600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを行う。現在は、ヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。ブログ「パレオな男」では、心理、健康、科学の最新の知見を紹介し、月間250万PVを達成。『科学的な適職』(クロスメディア・パブリッシング)、『ヤバい集中力』(SBクリエイティブ)など、著書多数。
かつての著者の暮らしは不健康そのものだったという。10年前、数々の失敗に懲りてようやく重い腰を上げた。それまで読破した科学論文から、健康と仕事の生産性に関わるものを片っ端から実行。その結果、半年経たずに体脂肪率が30%から12%まで下がった。いくら寝ても去らなかった疲労感は消え、生産性が向上。いまでは1日に2万から4万文字の原稿を書くほど、まさに「最高の体調」を手に入れた。
「その過程で......特に痛感したのは『すべては"人類の進化"という視点から考えたほうがうまくいく』という事実でした」
「人類の体は600万年の歴史を通してできあがった複雑な有機体」であり、進化の過程で一定のルールを身につけた。そのルールを知ったうえで現実に応用していくのが「最高の体調」への近道という。こうした「進化論に基づいた体調の改善法を、近年の科学界では『進化医学』と呼ぶ」としている。
では「文明病」とは、一体どんなものなのか。これは「近代社会の変化によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状」のこと。肥満、疲労感、なんとなくの不調、不眠、散漫な集中力、モチベーションの低下などがある。この「文明病」に立ち向かうために必要なのが「進化医学」の考え方。これは「ダーウィンが生み出した『進化論』と最新医学のデータを組み合わせ、人間の病気の正体を考えていく学問」のこと。
「自然のなかで獲物を追い、太陽の運行とともに暮らし、少数の仲間と語り合う。人の脳と体は、そんな原始的(パレオ)な環境のなかでこそ最高のパフォーマンスを発揮するように進化してきたのです」
「文明病」は、体だけでなく脳と心にも悪影響をもたらすという。目次には「文明病」が引き起こす重大な症状である「慢性的な炎症」と「不安」を解消するための「最高の○○」が並ぶ。
<炎症編>
序章 不調の原因は「文明病」
1章 最高の食事 ─腸内環境を整える─
2章 最高の環境 ─自然と触れ合う─
3章 最高の睡眠 ─光をコントロールする─
<不安編>
4章 最高のメンタル ─価値観を見定める─
5章 最高の仕事 ─ルールとフィードバック─
6章 最高の人生 ─マインドフルネスと畏敬─
終章 最高の体調でいるために
各章は、キャラ立ちした登場人物が面白いまんがのパートと、まんがでふれた事柄を著者が解説、まとめるパートで構成。「進化医学」と聞くと難しそうだが、とっつきやすく、噛み砕いた内容となっている。
まんがのあらすじは以下のとおり。
食品メーカー勤務の安藤すず(26)は、肥満体型な上、慢性的な疲労感と体調不良を抱えていた。ある日、極度の空腹と寝不足で倒れたすず。彼女を助けたのが、敏腕ウェブコンサルタントにして"進化医学マニア"の結城玲也だった。この一件をきっかけに、「最高の体調」を手に入れるため、すずは結城の体調コンサルティングを受けることになる。
結城は一見「クールで真面目でデキる人」「ビジネスマンの理想形」だが、実は原始人の格好ですずに熱弁をふるう変わり者。すずはそんな結城に冷ややかな突っ込みを入れつつ、教わったテクニックを実践。いつしか「最高の体調」を手に入れ、見違えるほど綺麗になっていく――。
食事、環境、睡眠......と、あらゆる角度からすずはパレオライフに近づいていくわけだが、ここでは「最高の環境」を紹介したい。
自然との触れ合いには、疲労を回復させ体調を良くする効果があるという。例えばうつ病の場合、週1回30分ほど自然のなかにいれば、自然との触れ合いがない人に比べて発症リスクが37%低下。高血圧の場合、週1回30分のラインを超えたあたりから症状が改善。こうした実験結果を紹介し、最低でも週1回30分は公園など森林の多い場所に行くことを勧めている。なお、自然の中で過ごすメリットは、癒し効果にとどまらず、電波が不自由であればデジタルデトックスの効果もあるという。
新型コロナウイルスの影響で外出さえも難しくなっているが、こんなことも書かれていた。森林や海の映像などの「自然画像」、川のせせらぎや風の音などの「自然音」、「フェイクツリーを含む観葉植物」など、「偽物の自然」でも癒し効果を得られるというのだ。
評者は完全に「文明病」に当てはまっていた。本書を読んで、どこまでパレオライフに近づけるかはさておき、気づかぬうちに心身につき過ぎた余計なものをそぎ落とし、シンプルに、原点に返りたいと思った。
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