このところ健康のテーマとして「睡眠」に対する注目がジワリと高まっている。2017年に「睡眠負債」が新語・流行語大賞候補にノミネートされ、現代人の睡眠に何か問題があるらしいことが認識されるようになった。本書『人生が劇的に変わる睡眠法』(プレジデント社)は、睡眠をめぐる負債を心身にためないためのアドバイスを集めたもの。著者の睡眠専門医が、さまざまな眠りの問題を抱える来院者とカウンセリングするスタイルで書かれており分かりやすい。
睡眠負債は米国の学者が指摘したもので、睡眠不足の積み重ねが健康リスクを高めるというもの。NHKスペシャルでこの問題を取り上げ、17年6月に「睡眠負債が危ない」というタイトルで放送した。この4月には同番組取材班書き下ろしによる「睡眠負債」が出版され、J-CAST BOOKウォッチでも取り上げている。
睡眠負債の指摘によれば、リスクが高まるのは睡眠不足が続いて「債務超過」になったとき。仕事を含む日常生活の質の後退、学習能力や免疫機能の低下ばかりか、高じていけば、うつ病やがん、認知症を招くことになるという。
本書で著者によるカウンセリングのモデルになっているのは7人。共通する悩みは睡眠不足だ。いずれも放っておけば「債務超過」が深刻化し、心身に健康リスクが及んできそうな気配だ。
20代男性、独身、IT企業システムエンジニア
40代男性、既婚、メーカー販売部課長
30代女子、独身、人材派遣会社営業職
50代男性、既婚、中小企業経営者
30代男性、既婚、地方公務員
40代女性、既婚、証券会社勤務
30代男性、独身、総合商社営業職
――というのが、来院者のプロフィール。年代別、職業別、役職別に考えられる「睡眠不足あるある」を思わせる悩み相談が続く。「30代女子、独身、人材派遣会社営業職」のパートでは、代謝への影響について触れ「(太るか痩せるか)分岐点になる睡眠時間は6時間」と紹介。これ以下の場合は痩せるホルモンの分泌が低下し、太るホルモンの分泌が増えるという。また「50代男性、既婚、中小企業経営者」とのやりとりでは、睡眠不足が認知症を招くプロセスや、加齢が目覚めを早めるメカニズムを説明。対策として軽い運動を心がけるようアドバイスが加えられていた。
本書では、睡眠不足は「世界中の人」を悩ませている問題と指摘。かつては、睡眠の問題は、その質であり、時間は削っても大丈夫――とする意見が優勢だったこともあったが、著者は「それはもう時代遅れの妄想」と切り捨てる。
「あまり眠らなくても体に悪影響がないショートスリーパーは、たしかに存在する。でも、世界の人口の1%未満だそう。しかも、そういう体質は努力すればなれるものではなくて、遺伝的なものだといわれる。その遺伝子を持っているかどうかだけ。時間をかけても上達することはなく、根性や気合いで身につくものではない」
睡眠時間を削って仕事や勉強に打ち込んだり、寝る間を惜しんで遊びに興じた経験を持つ人は多いだろう。そうしたことが命の危機にもつながる可能性が分かった現代では、睡眠ファーストを心がける重要性が分かる一冊。
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