読むべき本、見逃していない?

あぶってかも、あちゃら漬けとは福岡のどんな食べ物?

九州の味とともに 福岡

 九州を代表する焼酎メーカー、霧島酒造(本社・宮崎県都城市)が九州の食文化を紹介するガイドブックの第二弾として、本書『九州の味とともに 福岡』(スペースシャワーネットワーク発行、トゥーヴァージンズ 発売)を出した。

 食べ物のガイドブックというと、お店の紹介になりがちだが、本書は食文化という観点から、風土、食材、人、料理法と掘り下げているのが特徴だ。さらに豊富なカラー写真が旅情をかきたてる。

4つのエリアからなる福岡

 福岡県は北九州、筑豊、福岡、筑後の4つのエリアからなる。もつ鍋や博多明太子、水炊きが有名だが、地元でしか食べられない珍しい料理も含めて19の食べ物を紹介している。

 エリア別にまとめると、こうなる。

 北九州 合馬のたけのこ、ぬか炊き
 筑豊 田川ホルモン鍋
 福岡 シロウオ、一口餃子、あぶってかも、あちゃら漬け、おきゅうと、もつ鍋、ごまさば、博多明太子・いわしめんたい、ごぼう天うどん、水炊き、あら鍋、博多雑煮、がめ煮
 築後 わけのしんのす、鰻のせいろ蒸し、久留米焼き鳥

 独特の語感で、なんだろう? と想像をかきたてるものが少なくない。「あぶってかも」は、スズメダイを丸ごと塩焼きにしたもの、「あちゃら漬け」は、夏に欠かせない野菜料理で、和風ピクルスのようなものだ。だが、山笠の時期、山男はきゅうりを食べてはいけないならわしがあるので、きゅうりを入れないそうだ。ポルトガル語で"漬ける"を意味するアチャールが語源という説もあることを紹介している。

 「わけのしんのす」は、イシワケイソギンチャクのことだが、柳川の方言で"わけの=若い人の"、"しんのす=尻の穴"という意味で、見た目の形態からついたという説明がインパクトがある。写真を見ると、イソギンチャクというより大きなマッシュルームのような形をしている。味噌煮にして食べるとコリコリした食感が残るという。柳川でしか食べられない有明海の珍味だ。

作り方を教えた明太子の創業者

 有名どころでは、博多明太子の老舗「ふくや」の創業者・川原俊夫さんの話を紹介している。韓国・釜山にはスケトウダラの卵をキムチ漬けにしたような「明卵漬」(ミョンランジョ)というものがあった。戦後、福岡に帰国した川原さんが日本人の口にあうように試行錯誤を重ねて「味の明太子」として商品化した。たらこをカツオ節、昆布、唐辛子などをブレンドして作った調味液に漬けて熟成させる製法の特許を取らず、逆に作り方を誰にでも教えたそうだ。だが、調味液の味付けだけは教えなかったので、それぞれの店の味の多様な明太子が生まれ、博多の名物として全国に広がった。

もつ、ホルモン

 もつ鍋はいまや全国で食べられるようになったが、発祥の店といわれる「万十屋」を紹介している。戦後すぐから続くすき焼き風の味だ。鍋に入れる順番は、もつ、タマネギ、キャベツ、ニラ、唐辛子。野菜が蓋代わりになるので、「途中で混ぜずに、できあがるまでがまんですよ」と女将・松隈幸子さん。

 久留米焼き鳥や田川ホルモン鍋にも、ホルモンが使われている。後者はかつて「とんちゃん」と呼ばれていた。韓国語で内臓を表す言葉で、働きに来ていた韓国の人たちが作ったのが始まりだという。

 通して読むと、豊富な海産物と大陸・朝鮮半島との近さが、九州の独特の食文化を育んだことが感じられる。「博多は食べものがおいしい」とよくいわれる。コロナウイルスによる外出制限が解除され落ち着いたら、「福岡まで食べに行きたい」と思ったが、行かずとも福岡を食べつくしたような満腹感がした。食材と人に寄り添う清水義孝さんの文章と阿部健さんの写真がなせる業のおかげだろう。ネットの食レポに飽きている人に勧めたい。

 博多の屋台、北九州の角打ち、黒田藩と鶏肉文化などのコラムも面白い。巻末には掲載店リストも掲載されている。

  
  • 書名 九州の味とともに 福岡
  • 監修・編集・著者名霧島酒造 監修、清水義孝 執筆、阿部健 写真、三宅瑠人 イラスト
  • 出版社名スペースシャワーネットワーク 発行、トゥーヴァージンズ 発売
  • 出版年月日2020年3月27日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数A5変判・167ページ
  • ISBN9784908406584

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