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おでんは冬だけの食べ物ではない

枝元なほみの今夜はおでん

 「エダモン」の愛称で知られる料理家の枝元なほみさんが、おでんの本を書いた。本書『枝元なほみの今夜はおでん』(技術評論社)である。版元の技術評論社は、パソコンやIT関連書を多く扱うお堅いイメージの出版社。異色の組み合わせに興味をもち読んでみたら、いい味を出していた。

関西風と関東風

 先日、NHKの人気バラエティ「チコちゃんに叱られる!」が、おでんのルーツについて問題を出していた。関東風のしょうゆ味のおでんは、関東大震災後、多くの料理人が関西に移ったのをきっかけに、関西のだし文化を取り入れて変化した。関西で「関東炊き」と呼ばれるようになったおでんは、その後ふたたび関東から全国に広まったという解説だった。

 枝元さんは、おでんとのかかわりをこう書いている。

 「父に連れられて銀座のおでん屋さんに行ったのが、お店おでんの最初でした。有名なしょうゆ味の関東風のおでん」
 「大人になって当時の恋人と行ったおでん屋さんで、はじめて澄んだスープの塩味おでんを食べて、目からうろこ。その粋な感じの味に近づきたくて、牛すじを煮てみたりと背伸びをしました」

塩味としょうゆ味

 本書でも基本となる塩味のおでんとしょうゆ味のおでん、2種類の作り方をまず紹介している。

 【塩味のおでん】(4人分)だしは、鶏ガラスープ1.5ℓ(顆粒のスープの素でも代用可)、かつお昆布だし1.5ℓ、塩大さじ1と1/3。たねは大根、ゆでだこの足、こんにゃく、昆布、さつま揚げなどの練り物、はんぺん、焼きちくわ、木綿豆腐など。

 【しょうゆ味のおでん】(4人分)だしは、かつお昆布だし2ℓ、塩小さじ1~1と1/2、しょうゆ、みりん各大さじ3。たねは大根、じゃがいも、さつま揚げ、ちくわぶ、結び糸こんにゃく、ゆでたまご、ウインナー、春菊など。

 だしの作り方はもちろんだが、大根はかぶるくらいの水と大さじ1の米と一緒に20分ほどゆでるなど、下ごしらえの大切さを説いている。練り物は沸騰したお湯に入れて1分ほどゆでて油抜きをすると味がしみやすくなる。

 と言っても、市販品のだしを使ったり、大根の下ゆでは電子レンジでも出来たりと緩急自在なのが、「エダモン」流だ。

 これを基本に、牛すじおでん、串刺しおでん、肉おでん、夏の冷やしおでんなどのレパートリーを披露している。

ご当地おでんの数々

 おでんは各地にご当地おでんがある。本書でもみそだれで食べる「青森しょうがみそおでん」、車麩入りの「金沢おでん」、だし粉と青のりをかける「静岡おでん」、コクのある煮込み「名古屋おでん」、しょうがじょうゆで食べる「姫路おでん」、青菜と魚介「松江おでん」、讃岐うどんと一緒に「香川おでん」、あごだしで「長崎おでん」、テビチ(豚足)と青菜入り「沖縄おでん」を紹介している。

 評者も北陸新幹線の開通祝いで訪れた金沢で、甲羅にかにの身を詰め込んだ「かに面」やばい貝など特徴のあるたねが多い「金沢おでん」を食べた。たねはなんでもありで、各地さまざまな味があるおでんの可能性の広さを感じた。

市販品にたねを加えてもいい

 時間がない時に市販品のおでんセットを使った自分流のおでんを紹介しているのも枝元さんらしい。他に用意するのは、はんぺん、小松菜、油揚げとベーコンだ。油揚げの間にベーコンを挟み、竹串で縫うように刺す。後は市販品のおでんと一緒に温めるだけだ。

 枝元さんは、20人くらいを集めてのおでんパーティー(略してでんパ)を開いたことがあるそうだ。3キロ煮た牛すじがあっという間に売り切れたという。

 だしにたねを入れて煮込むだけ。そして火加減は基本、弱火。おでんはシンプルな料理だ。冬の食べ物とばかり思っていたが、これなら年中つくれそうだ。自由な発想の枝元さんから大きなヒントをいただいた。

  
  • 書名 枝元なほみの今夜はおでん
  • 監修・編集・著者名枝元なほみ 著
  • 出版社名技術評論社
  • 出版年月日2019年11月 9日
  • 定価本体1380円+税
  • 判型・ページ数A5判・127ページ
  • ISBN9784297106300
 

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