読むべき本、見逃していない?

100万円以上の買い物は、すべて投資

金のなる人

 日本マイクロソフト社長を務め、退社後は投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立、書評サイト「HONZ」代表でもある成毛眞さんが「お金」の本を初めて書いたというので、単なる金儲けの話ではないだろうと思い、本書『金のなる人』(ポプラ新書)を買った。

サラリーマンが資産増やすなら投資

 お金の本といっても、老後までに2000万円貯めるとか、投資でいくら儲けるという類の本ではない。お金とのつき合い方、向き合い方を見直して、自分らしく楽しく幸せな人生を送ろうと提案している。

 お金持ちになりたいと思っている人がいたら、すぐに「サラリーマンをやめなさい」という言葉しかないという。リスクをとらない人は永遠に成功できないからだ。

 サラリーマンを続けながら、少しでも資産を増やしたいというなら、投資しかない。きちんと給料を稼いで、まともな金融商品を買っていれば「老後資金が2000万円足りない」ということにはならないという。それは最低限とらなければならないリスクだとも。

 成毛さん自身は、定期貯金は1円も持ったこともないし、いかなる生命保険に入ったこともない。個別株式投資も買ったことはない。何をしたかというと、マイクロソフトからの給与で稼いだカネの全額を自分の事業と、信頼できる友人の事業に投資したそうだ。

 投資にかんする話の前に、お金の使い方について書いている章があり、そこが面白い。たとえば住宅だ。「即金で家を買えない人は絶対に賃貸にするべきだ」と書いている。今の日本の経済状況では、不動産価格が下がるのは目に見えているから、どこを買っても損をする可能性が高いという。

駅から徒歩7分以内の物件が条件

 関東ならば国道16号線の外ならば家を買ってもいい。元の価格がすでに安いので、不動産価値が下がっても、資産に大きな影響はないからだ。タワーマンションを買った場合と比べるとダメージが少ない。賃貸に住み続けた場合の家賃を考えると、トントンになるくらいだろうという。

 16号線の内側で買いたい場合、「駅から徒歩7分以内」の物件でなければダメだという。グーグルの検索ワードの最大ボリュームが駅徒歩8分から7分に変わったそうだ。駅徒歩7分以内であれば値上がりする可能性がある、と成毛さんは見ている。

 通して読んで思ったのは、大きな買い物をする場合、成毛さんは常に「出口戦略」を考えていることだ。100万円以上の買い物は、すべて投資の感覚だという。数年前に購入した熱海のリゾートマンションは、新築だったが、間取りを大幅に変更し、数千万円かけて内装を工事した。最終的なリセールは中国人の富裕層をターゲットにしている。

「ひふみ投信」の一択

 さて、いよいよ投資の話だ。100万円を貯めて、まず投資に回すことを勧めている。初めての人なら、レオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」の一択だという。日本の成長企業を発掘しようという姿勢を評価している。

 月2回の運用レポートや、投資先への訪問セミナーの顧客サポートもあり、ギャンブル的な投資・投機ではなく、「事業に対して投資すること」を学べるという。実績を紹介して勧めている。「まるでひふみ投信の宣伝のようだが、その意図はまったくない」と書いている。

投資先は新しいテクノロジーに

 ペット市場に投資したくなる出来事があった、と耳寄りな話を紹介している。猫の寿命を30歳に延ばすことのできる薬が開発されそうだという。猫の死亡原因のほとんどが腎臓病。東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授が世界で初めて発見したのが、血液中に存在する「AIM」というタンパク質だ。体内の不要なゴミが溜まるのを抑え、取り除く作用があるといい、ものすごいビジネスになると予想している。「投資先は新しいテクノロジーを持つところに限る」という。

 その上で、アメリカのゲノム編集工学にかかわるスタートアップ企業を具体的に紹介している。

 四半世紀前まだマイクロソフトに勤めていたときに成毛さんは、自己資金のほとんどをアメリカのGenentechなどバイオ関連企業に投資、いまの資産の大部分はこの投資によるものだという。投資の対象がIT企業ではなかったというのが面白い。

 一人5000円のしゃぶしゃぶよりも、500円のレバニラ炒めでいいと、一番好きな食べ物は「レバニラ炒め」を挙げる庶民感覚を持ちながらも、これまでで最も高価だった本は昨年、パリで買った総重量59キロ、見開きのサイズが93.6センチ×80センチという「巨大本」で価格は60万円だったという。

 中身はセバスチャン・サルガドの写真集2分冊と安藤忠雄デザインの書見台だ。売るつもりはないが投資に近いという。別荘の本棚に並べ、お客さんが来たときの話題になればと考えている。知的な刺激から新しいものが生まれることを期待しているのだ。

 投資家が何を考えているのか、どんな生活をしているのか、自分の体験をあまさず披露している。「40歳で稼げないと思ったら地方都市へ」「お受験には金を使わない」「3代続くお店に通う」などの提言も具体的で参考になるだろう。

  • 書名 金のなる人
  • 監修・編集・著者名成毛眞 著
  • 出版社名ポプラ社
  • 出版年月日2019年11月 6日
  • 定価本体860円+税
  • 判型・ページ数新書判・184ページ
  • ISBN9784591163115

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