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メディアを辞めた人、残った人 それぞれの決断の理由

決断

 会社を辞めるか辞めないか、迷っているサラリーマンは多いだろう。業界の先行きが不安だ、このまま会社にいても出世の見込みはない、好条件のスカウト話がある、好きな趣味を生かした仕事を始めたい......人によって動機はさまざまだろう。そんな人にお勧めしたいのが本書『決断――会社辞めるか辞めないか』(中公新書ラクレ)だ。

 著者は元マイクロソフト社長で実業家の成毛眞さん。投資コンサルティング会社の創業者でもあり、書評サイト「HONZ」代表のかたわら早稲田大学ビジネススクール客員教授も務める八面六臂の人である。

4人のジャーナリストの決断

 本書はマイクロソフト時代に成毛さんを取材した4人のジャーナリストとの対談をまとめたものだ。どんな人たちかと、見出し付きで紹介すると、こうなる。

 
 「老舗からベンチャーへ」瀬尾傑さん    講談社→スマートニュース
 「出世競争から外れて独立へ」大西康之さん 日本経済新聞社→ジャーナリスト
 「流されるまま別の道へ」柳瀬博一さん   日経BP社→東京工業大学教授
 「会社に残って『牙を研ぐ』」山田俊浩さん 『週刊東洋経済』編集長

 どの人の決断もそれなりに理由があり、共感できるものだ。瀬尾さんは講談社に移る前、実は日経BP社にいたから、転職は二回目になる。「天下の講談社」にいたから当然、給料は良かった。また残っていたらいずれもらえたはずの企業年金を棄ててまで、転職した理由は「時間が惜しかった」からだ。給料は下がっても、エンジニアが多くテクノロジーの環境がそろっている今の職場に満足しているという。

 成毛さんも「先を考えて50歳前後で辞める決断をした人って、信用力が増すと思うんですね。何も考えず60歳を迎えて退社した人と比べると、間違いなくチャレンジ精神は健在だし、逆に仕事仲間として信用できるんだね」と、瀬尾さんの決断を称賛している。

 「辞めない」という決断をした山田さんは、「東洋経済オンライン」を大躍進させた人としても知られる。月3500万PVを2億PVまで引き上げた。「比較的、うちの会社が自由にやっていいカルチャー」だから、辞めないという。趣味のアマチュアオーケストラの活動と仕事を長く両立できた、ことも大きな理由のようだ。

「冬の業界」はほかにも

 成毛さんが今回、対談した4人はメディア業界の人たちだが、新聞も雑誌も部数が激減している「冬の業界」だからこそ、そこにいる人たちの決断は参考になる、と語っている。

 公共交通機関、自治体、地方銀行なども、この先厳しくなると成毛さんは見ている。

 評者もメディアを早期退職した人間だが、日本経済新聞社や講談社などの社内事情が事細かく語られていて、実に興味深かった。メディア志望の学生の「業界研究本」としても有用だろう。  

  • 書名 決断
  • サブタイトル会社辞めるか辞めないか
  • 監修・編集・著者名成毛眞 著
  • 出版社名中央公論新社
  • 出版年月日2019年6月10日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書判・230ページ
  • ISBN9784121506603
 

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