読むべき本、見逃していない?

「2ちゃんねる」や「Twitter」でデマの被害にあったら・・・

  • 書名 インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(第3版)
  • 監修・編集・著者名中澤佑一 著
  • 出版社名中央経済社
  • 出版年月日2019年8月24日
  • 定価本体3000円+税
  • 判型・ページ数A5判・388ページ
  • ISBN9784502315817

 茨城県の常磐道で2019年8月に起きた「あおり運転」事件。まったく無関係な女性がネットで犯人の関係者扱いされ、名前や写真が公開されてバッシングを受けたことでも問題になった。

 本書『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(第3版)』(中央経済社)は、こうしたトラブルにどう対応すればいいか、具体的な方策を記している。約390ページもあり、お値段もそこそこするが、一般読者にも参考になる点が多い。

刑事と民事で対応

 大手メディアの報道によると、常磐道の事件では、あおり運転をしていた男だけでなく、車に同乗していた「ガラケー女」にも注目が集まった。ところが、まったくの別人をこの女性だとするデマ情報がツイッターで流され、そのデマを安易に信じてネットで拡散した人が多数いた。ある豊田市議(当時)もその一人。デマ投稿のツイッター情報で流されていた別人女性の写真を自身のFacebookに掲載、「早く逮捕されるよう拡散お願いします」と投稿していた。

 デマ情報を拡散された女性側は、この市議に対し慰謝料100万円を求める訴訟を東京簡裁に起こした。批判を受けた市議は11月2日、「一身上の理由」で市議を辞職した。

 「弁護士ドットコム」によると、デマを流された女性側は、SNSや匿名掲示板などで、デマを流した百件単位の投稿や記事について、発信者情報開示請求の手続を進めているとのこと。発信者を特定できた場合は、発信者に対する損害賠償請求などを検討するという。デマ情報を広げられた側が、本気で怒り、徹底的に反撃に出ているケースといえる。

 本書でも類似の事例が出ている。2017年に東名高速で起きた「あおり運転死亡事故」。北九州の石橋建設工業が「容疑者の勤務先」「容疑者の父」などのデマをTwitterや2ちゃんねるに書き込まれ大きな被害を被った。同社はこの対応などで一時休業を強いられたという。本書によると、その後、ネットにデマ投稿した11人が特定された。刑事事件としては不起訴処分になったが、同社は示談に応じなかった8人に対して民事訴訟を起こしたという。

「容疑者の特定」が可能

 ネットでは企業や個人が様々なトラブルに巻き込まれることがある。とりわけ頭に来るのが、悪質な誹謗中傷だ。たいがい匿名のユーザーによるものなので対処方法が分からない。見えない銃口から弾を撃たれている感じだ。

 一般にこうした誹謗中傷への対処は、抗議や訂正・削除・謝罪要求などのほか、こじれると刑事、民事の裁判にもなる。もちろん示談や和解になることもある。本書はその対処法について順を追って丁寧に説明している。

 ネットは匿名といわれているが、一定のやり方で追跡すると「容疑者の特定」が可能だ。本書は特にその「対策マニュアル」が念入り。「問題の発生から、対策の着手まで」「ウェブページの証拠化と証拠の保存」「サイト管理者等に対する請求」「アクセスプロバイダに対する請求」と順次解説する。

 さらに本書のキモは第Ⅲ章「コンテンツプロバイダ別対策」だろう。「2ちゃんねる」「5ちゃんねる」「2ちゃんねる/5ちゃんねるのミラーサイト・コピーサイト」「Twitter」「Facebook」「Instagram」「Googleマップ」「転職会議」「爆サイ.com」「YouTube」「Amazon」などが並ぶ。

 「その他の代表的なサイトに関する情報」では「みんなの就職活動日記」「ホストラブ」「Amebaブログ」「したらば掲示板」「e戸建て/マンションコミュニティ」「teacup掲示板」「Yahoo!知恵袋」「OKWAVE」「ココログ」「シーサーブログ」「NAVERまとめ」「ニコニコ動画」「FC2」「教えて!goo」「TikTok」など。第Ⅳ章では「アクセスプロバイダ別対策」第Ⅴ章では「検索エンジン別対策」と続く。それぞれの特徴や請求方法、サイト別の書式などについて丁寧に記されている。

 とくに「2ちゃんねる」「Twitter」については多くのページが割かれている。グローバルにサービスを展開している企業を相手にする場合は、法的対応を日本法人では受け付けていないことが多いので、専門家に頼らざるを得ない。そのあたりも詳しい。

仮処分申請も急増

 本書は基本的には実務者向け。2013年の初版では「はじめに」で、「この先10年、20年後には必ずインターネットトラブルへの対処が法律実務家の基本的な能力となる時代が来るのではないでしょうか」と記している。実際、東京地裁が扱ったネット関連の仮処分申請は、08年には35件しかなかったのに、17年には755件に急増しているそうだ。

 本書は初版が4刷、その後16年には2版が出て6刷。そして19年8月に最新の3版が出た。新しい判例や事象に即して、版を重ねている。良心的な本だといえる。弁護士や企業の法務、広報、危機管理担当者を読者として想定しているようだが、各サイトなどで被害を感じた一般人も、弁護士に相談する前に読んでおけばためになる。

 著者の中澤佑一さんは弁護士。『ケース・スタディ ネット権利侵害対応の実務――発信者情報開示請求と削除請求』などの共著がある。

 BOOKウォッチでは関連で『ある日突然、普通のママが子どものネットトラブルに青ざめる』(アイエス・エヌ)、『流言のメディア史』 (岩波新書)、『フェイクニュース』(角川新書)、『証言集 関東大震災の直後 朝鮮人と日本人』 (ちくま文庫)なども紹介している。

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