読むべき本、見逃していない?

84歳が教えてくれる・・・脳みそは「自動更新」できません!

  • 書名 独学のススメ
  • サブタイトル頑張らない! 「定年後」の学び方10か条
  • 監修・編集・著者名若宮正子 著
  • 出版社名中央公論新社
  • 出版年月日2019年5月 8日
  • 定価本体820円+税
  • 判型・ページ数新書判・208ページ
  • ISBN9784121506559

 高齢化社会になって、長い人生を持て余している人は少なくない。そんな人の励みになり、参考にもなるのが本書『独学のススメ-頑張らない! 「定年後」の学び方10か条』(中公新書ラクレ)だ。

 日々を漫然と過ごすのではなく、やりたいことを探して向上心を持つ。そうすれば老後は今まで以上に豊かで楽しくなるという。

40万円でパソコンを買った

 著者の若宮正子さんは1935年生まれの84歳。仕事ではパソコンに触ったことがなかったが、約四半世紀前の50代後半から個人的にパソコンの勉強を始めた。退職後は自宅で母の介護をすることが決まっており、外で人と会う機会が減ることが予想されていた。ネットを使えばいろいろな人とおしゃべりできるということを知り、当時のお金で40万円をはたいてパソコンを買ったのがすべてのはじまりだった。

 プログラミングも独習した。「小学生でもわかる」というタイトルの本で学んだ。雛壇に雛人形を正しく並べるアプリをつくりたいと思ったのがきっかけだった。99年にはシニア世代のサイト「メロウ倶楽部」の創設に参加。いまでは世界最高齢のアプリ開発者として脚光を浴びている。

 高齢で活躍する女性は少なくないが、若宮さんのように定年前後から畑違いのパソコンの世界に首を突っ込み、独習で高いレベルに達した人はまれだろう。英語も準1級だという。82歳の時にはアップル社の国際的なイベントに招かれ、ティム・クックとも話したという。その翌年には国連でも講演、政府の「人生100年時代構想会議」の最年長メンバーにも選ばれた。

 これまでに『パソコンでいきいきシルバーライフ』、『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』、『花のパソコン道』、『60歳を過ぎると、人生はどんどんおもしろくなります。』など何冊もの本を出しており、雑誌などに登場することも多い。

ネットにつなぐまでに3か月

 本書はそんな著者の最新刊。「第1条 バンジージャンプじゃあるまいし、 こわがらずに飛び込んでみよう! 」「第2条 飽きたらやめちゃえ」「第3条 『英語』は大阪人のノリで 」、「第4条 ノルマを課しちゃダメ」、「第5条 『やりたいこと』の見つけ方、お教えします」「第6条 ちょっと待った! 自分史を書くのはまだ早い」「第7条 『将来』に備えない。10年経ったら世界は違う 」、「第8条 退職してからのお友達の作り方 」、「第9条 本から学ぼう」、「第10条 教えることは、学ぶこと」。このラインナップを見ただけで、60歳以上の人は手に取りたくなるのではないか。

 若宮さんはいわゆる戦中派だ。学童疎開などで小学校時代の教育はすっぽり抜けた。戦後に高校を卒業して1954年、三菱銀行に入行。大卒ではないが、高校は超名門の東京教育大附属(現在の筑波大附属)だから、地頭は相当良かったに違いない。銀行では最終的に管理職になったという。何かと堅苦しい三菱で、管理職まで勤め上げたのだから、凡庸ではないはずだ。

 もっとも、パソコンでは苦労したという。セットアップからネットにつなぐまでに3か月もかかってしまった。普通なら投げ出すところだが、粘り強い。この一点において著者の根性が伺える。当時は周囲にパソコンが分かる友だちがいなかった。その経験から、いまではNPO法人「ブロードバンドスクール協会」の理事として、ネットで躓いた人のサポートにも関わっているという。

『君たちはどう生きるか』を読んでいた

 若宮さんはネットのエキスパートだが、本好きでもある。「独学の基本は、読書です」と明言する。そもそも子どものころは紙不足で、本がまともに手に入らなかったから本への飢えがあった。ようやく本が買える時代になったころ、父親がプレゼントしてくれたのが吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』だった。「『人間はどう生きるか』ということを問いかけてくれる、それまで読んだ本とは、ひと味違った本、書いておられる方の気持ちと熱意が伝わってくる本でした」と振り返っている。最近の『君たち・・・』のリバイバルに、「名著というものは時を超えるものだなと実感しました」。

 本書には多数の「知恵」が詰まっているが、一つだけ挙げるなら「脳みそは『自動更新』できません」という項目だろう。「脳みそのアップデート」は自力でするしかない。パソコンのように「自動更新」できないということ。自分の脳みそのバージョンが古くなっているかもしれないということを常に意識して自覚的にアップデートを試みることが大切だというのだ。これは、言われてみればまさにその通りだが、できている人は少ないのではないだろうか。現役を退き、いわゆる「定年後」を生きるすべての人に突き刺さる言葉だと思う。

 関連で本欄では映画評論家の佐藤忠男さんの『独学でよかった』(三交社)、在野史家による『独学で歴史家になる方法』(日本実業出版社)なども紹介ずみだ。

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