読むべき本、見逃していない?

タワマンの2037年危機とは?

  • 書名 限界のタワーマンション
  • 監修・編集・著者名榊淳司 著
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2019年6月17日
  • 定価本体800円+税
  • 判型・ページ数新書判・208ページ
  • ISBN9784087210798

 不動産投資やタワーマンションについて辛口の本が増えている。その中でも本書『限界のタワーマンション』 (集英社新書)は際立っている。とにかく内容が手厳しい。マンション業界の「言ってはいけない残酷な現実」を語り、「それでもあなたは住みますか?」と畳み掛ける。

地震に弱い

 大規模修繕は? 災害リスクは? 子育て環境は? 健康影響は? 資産価値は?――あらゆる意味で、タワマンは限界にきている!――と言うのが本書の主張だ。著者の榊淳司さんは1962年生まれの住宅ジャーナリスト。80年代後半から30年以上、マンションの広告・販売戦略に携わり、その経験を生かし、購入者側の視点に立ちながら、日々取材を重ねているという。業界に長年依拠してきたはずなのに、ここまで言い切って、やっていけるのだろうか。他人事ではあるが、心配になる。

 タワマンの大規模修繕、通勤や子育て環境などの問題については、これまでもしばしば指摘されてきた。本書の特徴は各論。リアルな報告が続く。

 「タワマン銀座・武蔵小杉の悲惨な状況」「タワマンに"NO"を突き付けた神戸市」「住宅の業界人はタワーマンションに住んでいない」「電力供給が途絶えると、水も出ないのがタワマン」「タワーマンションで育つと近視になりやすい?」「ヨーロッパの国では高層階での子育てはしないように指導」「子どもの心を蝕む階層意識」「2037年、いくつかのタワーマンションが廃墟化する」「大阪北部地震でエレベーターが停まった・・・」。

 タワマンはエレベーターが正常に稼働しているというのが大前提。電力でポンプを稼働させて水道水を最上階まで上げて上水道が供給されている。それが崩れるとどうなるか。地震で困ったケースの具体例が出ている。37階まで幼子連れで歩いて上がるのに1時間かかったという。

「30分早く家を出る人」が増えた

 地域別の具体例では武蔵小杉。2008年頃から18年までに14棟のタワマンが建って7000戸の住宅が増えた。その結果、どうなったか。「30分早く家を出る人」が増えたという。朝のラッシュがひどくてすぐに電車に乗れないからだ。現在は多少緩和されたようだが、これは他のタワマン急増地の駅でしばしばみられる光景だ。東京の湾岸エリア、月島や勝どきでも、駅の改札付近ですでにぎゅうぎゅうになっている様子が報道されていた。

 そもそも最寄りの駅の施設はタワマンよりもはるか以前にできている。電車のダイヤ編成も同じ。タワマンが完成し、乗降客が増えて騒ぎが起きてからの対応となる。保育園や学校、公園などのインフラも、タワマン建設とのタイムラグがあり、一時的に不足状態になる。これがタワマンの宿命だ。

 タワマンの最大の特徴は、まだでき始めてから日が浅いという点にある。概ね2000年ごろからだ。それも規制緩和によるもので、本当の意味での住宅対策とは言い切れない。つまり、ディベロッパーは儲かるからあちこちに建てているだけ。都心部タワマンの大半は、販売価格の面ではもちろんのこと、管理費や修繕積立金、固定資産税などのコストを考えると、普通のサラリーマンの収入とはかけ離れている。最近では金持ち中国人が増えていると言われるから、誰のために作っているのか分からない。地元の自治体は周辺整備で税金から相当の出費を強いられている。

理事会の腐敗が起きやすい

 本書でなるほどと思ったのは従来の板状マンションとの比較だ。旧式マンションは施工法が確立しており、施工精度も均質化、デザインなどで面白味はないが、大規模修繕も容易だ。規格品でまかなえる。これに対しタワマンはオーダーメイド。同じ施工会社でも物件によって施工法が違ったりする。つまり大規模修繕のやり方も物件によって異なる。その結果、費用面が膨らむ。特に上層階の外壁修繕が難しい。

 本書によると2022年ごろにタワマン大規模修繕の第一波が来て、37年ごろに第二波が訪れる。もちろんコストがかかるのは第二波だ。そのための修繕費のストックができている管理組合は少ない。

 本書では「理事会の腐敗はタワーマンションで起こりやすい」「タワマン管理組合の『特別決議』とは」「投資目的で購入されたタワマンの末路」などの項目もある。今タワマンに住んでいる人にとっても気になる話が出ている。

 本欄では関連して、日経新聞調査チームがタワマンには多額の「税金」が投入されていることを暴いた『限界都市――あなたの街が蝕まれる』(日経プレミアシリーズ新書)、朝日新聞の取材班が迫りくる不動産不況を描いた『負動産時代』(朝日新書)などを紹介している。榊さんの著書では『マンションは日本人を幸せにするか』(集英社新書)を紹介済みだ。

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