竜巻といえばアメリカだろう。大陸という竜巻の起きやすい地理的条件から、世界の発生数の約4分の3がアメリカで発生しているという。アメリカには竜巻の追っかけがいることも、映画「ツイスター」で知った。古い映画で恐縮だが、「オズの魔法使」(1939年)では、ドロシーという女の子が家ごと竜巻に巻き込まれ、「不思議なオズの国」に飛ばされてしまう。当時はありえない話だと思って見たが、映画の中であの竜巻だけがリアル世界とファンタジー世界をつなぐものだと理解した。
日本でも、巨大竜巻こそ少ないが、毎年平均25個くらいは発生していて、1個につき家屋被害30棟、死者0.5人だという。
気象災害としては被害が小さいせいか、過去の世に出た竜巻についての専門書は『たつまき』(藤田哲也著、共立出版)だけ。それも、なぜか「上巻」だけで、下巻は出ずじまいとなっているという。本書『竜巻のふしぎ』(共立出版)は気象予報士でテレビキャスターの二人が書き上げたものだが、これが初の一般書だという。
ただ、気象庁気象研究所は、「地球温暖化によって、2075~2099年には、F2以上の巨大竜巻の発生数が、これまでより倍増する恐れがあるという予測を発表しており、あんがい時宜を得た出版かもしれない。
上記の「F」という記号は、風速をもとに竜巻の強さを表すスケール。秒速でF2=50~69メートル、F3=70~92メートル、F4=93~116メートル、F5=117~142メートル。日本人の竜巻研究者・藤田哲也博士が提唱して、いまでも使われている。
巻末に、森氏が書いた藤田哲也伝を載せている。これがうれしい。
明治専門学校(現九州工業大学)機械科をでた藤田は、長崎の原爆調査に参加したことから気象学に関心を持ち、努力と偶然と幸運が重なって、後にシカゴ大学教授となった。そこで竜巻研究の第一人者となり、ドクター・トルネードの愛称で呼ばれるようになった。つまりFはFujitaのFなのです。
着陸態勢時の旅客機を墜落させる原因のひとつであるダウンバースト現象も発見している。その後、ダウンバーストを探知するドップラーレーダーが世界中の空港に設置され、離着時の墜落事故が急減した。この成果により、気象学界のノーベル賞ともいわれる「フランス航空宇宙アカデミー金メダル」を受賞している。日本ではあまり知られずに終わった世界的な気象学者だった。1998年没。
日本では稀とはいえ、竜巻に遭遇したらどうしたらいいのか。まずはコンクリートの建物に避難し、窓を閉める。飛散したガラスで怪我をしないようカーテンを引く。さらに建物の中でもトイレやクローゼットのなかのほうが安全だという。避難できる建物がなければ、水路のようなくぼみをさがし、そこにうずくまって、頭や首を守ると良いという。
この手の本は一度は読んで、知識を頭の隅にしまっておいて損はない。
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