出版不況と言われるが、最近の出版界を振り返ると、「子ども向け」で大ヒットが続いていることに気づく。「うんこ」のドリルはとっくに累計300万部を突破し、『漫画 君たちはどう生きるか』も200万部を超えている。『ざんねんないきもの事典』も大好評。第二弾、第三弾と続いて、合わせると200万部前後になるようだ。
本書『わけあって絶滅しました。』(ダイヤモンド社)も子ども向けだ。動物ライターの丸山貴史さんが原稿を執筆、動物学者の今泉忠明さんが監修している。この二人、実は『ざんねん・・・』でもコンビを組んでいる。本書はいわば『ざんねん・・・』の別バージョンともいえる。
『ざんねん・・・』はちょっと不思議な進化を遂げた生物を紹介していたが、『わけあって・・・』はズバリ「絶滅」がテーマ。もはや地球に存在していない。誰かの詩に「哀しいのは忘れられた女です」というのがあったが、まさに忘れられてしまった、いちばん「ざんねんな」生き物たちだ。在りし日をしのんで、化石などから想像力で復元したイラストが付いている。発売後まもなく増刷しており、売れ行きはこちらも好調のようだ。
タイトルがなかなか上手い。「わけあって」といわれると、「どんなワケがあったの」と大人でも前のめりになる。「聞いてくれ、その理由を」というキャッチも付いている。その通り、確かに、聞きたくなる。イラスト交じりの表紙もよくできている。
絶滅理由で圧倒的に多いのは「理不尽な環境変化」。火山が爆発する、隕石が落ちてくる、地球がものすごく暑くなる、あるいは逆に寒くなる。二番目が「ライバルの出現」。そして三番目が「人間のせい」。しかし第一、第二の理由に比べれば少ない。
「環境変化」ではティラノサウルスが紹介されている。6600年前の隕石の落下で大量の砂塵が大気中に舞い上がった。その結果、太陽がさえぎられて植物が育たず、草食恐竜が死んだ。この隕石落下による環境変化で地球上の生き物の70%が絶滅したという。
ニュージーランドの島には19世紀末になっても「飛べない鳥」が生息していた。スティーブンイワサザイという。ところが島に灯台が作られ、人間と共にネコがやってきて、食いつくされてしまった。未知の天敵が現れたのだ。
ニホンオオカミはどうか。明治維新で外国人が来る。犬もつれてくる。その犬の狂犬病が日本犬にうつり、さらにニホンオオカミにうつったという。明治維新からわずか38年で絶滅したとされている。
本書によれば、生き物の絶滅する確率は99.9%。我々人類が生き残っているのは奇跡のようなものだ。今の地球の動物たちがいかに「希少」なのか分かる。
本書では最後に「絶滅しそうで、していない」という章も設けている。よく知られているシーラカンスはとっくに死に絶えていたと思われていたが、1938年、生きて発見された。理由は深海に暮らしていたから。度重なる地球の環境変化の直撃を受けなかった。
このように「子ども向け」とはいえ、ためになる豆知識が満載。「うんこシリーズ」や『君たちはどう生きるか』も含めて、売れているのは単純な娯楽本ではない。知識の学び方や思考力の鍛え方を、漫画やイラストも使いながらわかりやすく説いている。親子で手に取れる本でもある。こうした共通項を押さえていくと、子ども向けとはいえ、ベストセラーになりそうな本はまだまだ生み出せそうだ。
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