映画「友罪」(脚本・監督 瀬々敬久 主演 生田斗真、瑛太)が、5月25日に公開された。人間の本質に迫った「64-ロクヨン-」が大ヒットした瀬々敬久監督による、ヒューマンサスペンス。主演の生田斗真と瑛太は、史上最も難しいとされる役に挑んだ。
映画の原作である本書『友罪』は、2013年に集英社より単行本として刊行され、加筆・修正を行い、15年に文庫化された。著者の薬丸岳は本作について、「発表する時、喜びよりも先に恐れを抱いた」と語ったという。
本作は、1997年に神戸市で起きた連続児童殺傷事件を連想させる設定。「少年A」が医療少年院を出て「鈴木」と名乗り、働き始める。そして「鈴木」が「少年A」だと気づいた周囲の人々の内面が描かれている。同僚の「益田」、鈴木に好意を寄せる同僚で元AV女優の「美代子」、医療少年院で母親的な役割を担った「弥生」。この3人の視点から物語は進められる。
仕事に挫折し、埼玉の町工場に就職した元週刊誌記者の益田は、同時に採用された鈴木と出会う。夜になると尋常でない唸り声を上げたり、寮の仲間と距離を置いたりする鈴木を、益田は不可解に感じていた。
益田は鈴木を見ていると、14歳の時に自殺した同級生の学を思い出す。学を助けることができなかった罪悪感が、今も益田を苦しめている。
「もし、ぼくが自殺をしたら、痛みを感じる?」と鈴木に訊かれ、「悲しいに決まってるだろう」と益田は答える。それは鈴木への特別な感情ではなく、鈴木を救えたら、学との過去を帳消しにできるという思いだったが、「自分のことを必要としてくれる友達に初めて出会えて、本当にうれしかった」と、鈴木は目を潤ませる。
益田と鈴木は次第に打ち解けていくが、ある時から益田は鈴木に対して、14年前に連続児童殺傷で日本中を震撼させた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと、疑惑を抱くようになる。
「たとえどんな話を聞いたとしても、友達でいてくれるって約束してくれるかな」と、過去に犯した罪を益田に告白しようとする鈴木。「友達でいるという約束を守れる自信はない」と思うとともに、「彼のことを自分と同じ人間だと思いたい気持ち」も益田の本音である。
鈴木に対する益田の感情の動きが、最終的にどう収まるのか最後までつかめず、終始緊張感が漂っている。犯罪者がその後どう生きて、周囲の人々とどんな関係を築くかなど、想像したことがなかった。本作を読めば、もし友人が犯罪者だったら、自分はどう感じ、どう接するか?というテーマと向き合い、考える機会を与えられる。
著者の薬丸岳は、05年に少年法をテーマにした『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。16年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『闇の底』、『ハードラック』(以上、すべて講談社)、『アノニマス・コール』(KADOKAWA)など。著者は、犯罪の加害者と被害者をテーマにした作品から、展開が二転三転するエンターテイメントまで、様々なミステリーを世に出している。
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