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池上彰さんの愛読書、そうだったのか!

みちのきち 私の一冊

 本離れ、活字離れがとりざたされるようになって久しいが、年を追うごとに強まる危機感から生まれたのが本書『みちのきち 私の一冊』(弘文堂)。長期的に続く読書時間の右肩下がりを食い止め、なんとか反転の機運を盛り上げようと企画された。その趣旨に賛同した各界の著名人109人が「思い入れの深い一冊」選んで推薦文を寄せ、それらをまとめ美しい装丁の書籍に仕上げたもの。

本離れ食い止めるきっかけに

 さまざまな分野でそれぞれ、一目置かれる業績を挙げてきた人たちの「私の一冊」。読んだことがない書籍には、おもしろそうだな、じゃあ次に...と思わせるものが少なくなく、既読のものに出合えば、そういう読み方もあるのかと気づかされる。一人分が見開き2ページ。左側に推薦図書の写真を配置しているが、いずれも単なる書影ではなく、アングルやライティングに気を配って撮影し、書籍や推薦人にゆかりの小物をコーディネートするなどビジュアルに工夫を凝らす。小口が表紙や裏表紙と同系色のメタリックに塗られており、書店ではアイキャッチになりそうだ。

 本書を制作したのは国学院大学(東京都渋谷区)の若手職員を中心に10人ほどで構成するグループ「みちのきちプロジェクト」。同プロジェクトは、読書習慣がある学生生活の復活を目指して2017年に始動し、その第1弾としてキャンパス内に書架と読書スペースを備えた「みちのきち」を開設した。本書の刊行は、プロジェクトの第2弾。「みちのきち」は、本書の「おわりに」によると、読書を通して「未知」を「既知」に変えてほしいとか、人生を「道」とみて、迷ったときによりどころとなる「基地」をみつけてほしいなどの思いを込めたものという。

 同プロジェクトを始めるきっかけは、大学生をはじめ若者の本離れに対する危機感から。全国大学生活協同組合連合会が17年10~11月に行った「学生生活実態調査」によると、1日の読書時間の平均は前年比0.8分減の23.6分で3年連続の減少。1日の読書時間「0」分は53.1%と前年比4.0ポイント増で5割を超えた。読書時間ゼロは5年間で18.6ポイント増という。

 本書ではデジタルネイティブ、スマホネイティブにも親しみやすくするためか横書きでレイアウト。最初から細かい字でびっしりではとっつきにくかもしれないと、文字数が少ない寄稿から大きい文字で並べ、読み進むほど字が小さくなるよう配している。

あのベストセラーがやはり

 最初に登場するのは、元NHK記者のジャーナリスト、池上彰さん。推薦図書は『君たちはどう生きるか』(岩波文庫)だ。雑誌「世界」の編集長を務めた吉野源三郎さんが子ども向けに書いた物語で1937年に出版されたものだが、2017年8月にマガジンハウスから新装版に加え漫画版が出されると爆発的な売れ行きをみせ、池上さんが本書で推薦している岩波文庫版もベストセラーランキング入りした。

 池上さんは、この『君たちは』が愛読書であることから、漫画版などによるリバイバルブームで、吉野さんの長男でジャーナリストの源太郎さんと月刊誌で対談。同書へのかかわりを深めている。『君たちは―』は、ほかに、ポプラ社のポプラポケット文庫版があり、華道・池坊家の次期家元、池坊専好さんが本書で、こちらを推薦している。

 109人から寄稿があった本書だが、推薦の書籍が重複するのは意外に少なく『君たちは―』を含めて3冊だけで、ほかは、山本周五郎の『ながい坂』と世阿弥の『風姿花伝』。

 主な寄稿者はほかに、作家の池井戸潤さん、林真理子さん、元プロレスラーのアニマル浜口さん、医師の鎌田實さん、神奈川県の黒岩祐治知事、東京都の小池百合子知事、北海道の高橋はるみ知事、元プロテニスプレーヤー杉山愛さんらに加え、財界、芸能界、スポーツ界から多彩な顔ぶれが並ぶ。なかで、ブロードキャスターのピーター・バラカンさんが、稲垣えみ子さんの『寂しい生活』を挙げていることが興味深く、小池東京都知事が、複数の研究者による旧日本軍の戦史研究『失敗の本質』を推薦しているのは、示唆に富むと感じさせた。


【本書を5名様にプレゼントします】 詳しくは、こちらから。
  • 書名 みちのきち 私の一冊
  • 監修・編集・著者名國學院大學ブックプロジェクト 編
  • 出版社名弘文堂
  • 出版年月日2018年4月25日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・256ページ
  • ISBN9784335950407
 

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