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湊かなえの文学少女ぶりがわかる

物語のおわり

 『告白』などのベストセラーをもつ湊かなえの作品は正直言って敬遠してきた。「イヤミス」と言われ、読んだ後に嫌な気分になることで知られているからだ。本書『物語のおわり』(朝日新聞出版)は、帯に「新境地」とあるように、物語の内容も形式も見たことがないような作品で、タイトルを『物語のおわり』とした著者の意気込みがうかがえる。

 山間の盆地にある小さな町のパン屋に生まれた絵美という文学好きの少女が、はじめの物語の主人公。年上のハムさんという少年にプロポーズされる。彼は、北海道大学に進学し遠距離恋愛が始まる。やがてハムさんは町に戻り、高校教師となり、正式に結婚を申し込む。しかし、作家になりたいという夢をもつ絵美は東京に行こうと駅に行く。すると、そこにはハムさんがいた。ここで物語はおわる。

 そこからは別の章となり、それぞれ別の主人公が登場する。妊娠三カ月でがんが発覚し、子どもをあきらめて手術をするかどうか悩む智子。実家の工場を継ぐことを迫られ、プロのカメラマンになる夢をあきらめようとする拓真。志望した会社に内定が決まったが、才能に自信が持てずにいる綾子。夢に向かってアメリカ行きを切望する娘に反対する大水。夢を追う人と別れ、仕事一筋に證券会社で働いてきたあかね。迷いを抱えた人々が向かった先は北海道だった。彼らは「空の彼方」と題した小説のコピーをそれぞれ手渡され、読んで、その後の生き方の参考にする。「空の彼方」は、絵美とハムさんの物語だった。

 そういう構造の作品だから、予想通り、最後の章は冒頭の章のつづきだった。あらすじを明かすわけにはいかないが、結びに出てくる「北国の夏の夕方の空」のようなさわやかなラストだと言っておこう。

 文学好きの絵美の造形には、広島の因島で育ち、空想好きで推理小説を読みふけったという著者の少女時代が反映されている。湊かなえの「自伝」的要素がにじんだ作品と言えよう。

 本書は2014年10月に単行本として発行され、今回文庫化された。

  • 書名 物語のおわり
  • 監修・編集・著者名湊かなえ 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2018年1月30日
  • 定価本体640円+税
  • 判型・ページ数文庫判・357ページ
  • ISBN9784022648730

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