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伝統の「サントリー宣伝部」出身です

二子玉川物語

 サントリー宣伝部というと、開高健や山口瞳らを輩出したことで有名だ。著者の吉村喜彦さんも、同じサントリー宣伝部出身だ。

 京都大学の学生時代には、ブルーズ・バンドのヴォーカル、サイドギターとして活躍。サントリーでは輸入酒を担当し、ジャック・ダニエルの新聞広告で朝日広告賞受賞した。テレビCMでも、井上陽水の「角瓶」、ミッキー・ロークの「リザーブ」、和久井映見とショーケンの「うまいんだな。これがっ」の「モルツ」などヒット作を連発している。

 そのまま仕事を続けていたら、サントリーの役員になっていたのかもしれないが、18年間務めて退社、エッセイやノンフィクション、小説などに転じた。ラジオの音楽番組などに登場することも多い。

 本作『二子玉川物語』は、小品小説シリーズ「バー・リバーサイド」の二作目だ。東急田園都市線の二子玉川駅で降りて、多摩川方面に歩くと、小さなバー、「リバーサイド」がある。L字型のカウンターに7席。マスターは60歳。

 店に集う常連客や、フリの客などが主人公のショートストーリー5編が収められている。寿司屋の二代目、美容院経営者、電車の運転士などの悩みに、オカマの春ちゃん、台湾人の美人整体師、清潔神経症のライターなどの常連が相談にのって、物語が動き出す。

 サントリーで洋酒を手掛けた著者が、バーの話を書くのだから、つまみやアルコールの話はお手のものだ。マスターが冷凍庫から取り出した緑色のボトルに詰まっている謎のウイスキーや、マタタビをドライフルーツにして練り込んだ生チョコなど、飲んだことも、食べたこともなかった美酒珍味がページを開くたびに顔を出す。こんな隠れ家バーが近所にあったら、毎日のように通うかもしれない。

  • 書名 二子玉川物語
  • サブタイトルバー・リバーサイド2
  • 監修・編集・著者名吉村喜彦 著
  • 出版社名角川春樹事務所(ハルキ文庫)
  • 出版年月日2017年10月13日
  • 定価本体540円+税
  • 判型・ページ数文庫・216ページ
  • ISBN9784758441261
 

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