AV女優、風俗、介護などの業界でフィールドワークを行い、貧困化する日本の現実を可視化するために傾聴・執筆を続けているノンフィクションライターの中村淳彦さん。
このたび、『中年婚活 50歳、年収450万円からの結婚に必要な30の法則』(大洋図書)が刊行された。これは「年齢50歳&年収450万円というスペックの独身中年男性が、婚活をして相手を見つけて結婚をしようという本」だという。
中村さんといえば、『東京貧困女子。』(11月からWOWOWで放送される趣里さん主演のドラマ『東京貧困女子。‐貧困なんて他人事だと思ってた‐』の原作)などの著書のイメージがある。なぜ婚活? なぜ中年男性? と思ったが、そこにはどうやら切実な理由があるようだ。
令和4年版少子化社会対策白書によると、50歳の時点で一度も結婚したことがない生涯未婚の割合が、男性は28.3%だという。これは平成以降に起こった特異な現象で、自由恋愛、女性の社会進出、非正規雇用の推進など、時代が変化した結果、結婚しない、結婚できない男性が激増したそうだ。
過去の生涯未婚率を見てみると、1960年は1.3%、1990年は5.6%、2000年は12.6%。ほぼ全員が結婚する皆婚社会から、3人に1人が生涯未婚のまま人生を終える社会へと、この数十年で様変わりしたことがわかる。
そこで中村さんは問う。「人生を束縛されたくない」「自由を求めて」「自分のためだけにお金を使える」という理由で未婚を選択した人も、「40歳を超えたあたりから孤独を感じる時間が増えていませんか」と。そして「孤独は健康によくありません」と警鐘を鳴らす。
実際、生涯未婚男性の寿命は極端に短く、男性全体の平均寿命がおよそ81歳であるのに対し、未婚男性の死亡年齢の中央値は67.2歳。死因は、腎不全、糖尿病、高血圧性疾患、悪性癌など。生涯未婚男性の半数が67歳までに死んでいるという事実に、中村さんも驚いたそうだ。
「本書は中年男性の婚活指南本であると同時に、死なないために、ラストチャンスに婚活にチャレンジしてみませんか? というメッセージも込めています。若い頃のように『束縛されたくない』『自由でいたい』『お金を自由に使いたい』なんて言っている場合でないことは、終焉が迫ったみなさんにはわかっていただけたかと思います。」
じつは3年前、中村さん(当時49歳)は妻を病気で亡くし、悩んだ末に婚活したという。そして婚活マッチングアプリで出会った女性と入籍。「アラフィフの中年男性にもかかわらず、完璧な結果を伴う婚活を短期で成功させた」ということで、本書の執筆依頼がきたそうだ。
当時はすぐに再婚するつもりはなかったものの、そんな悠長なことを言っている場合ではないと悟り、行動を起こしたという。
「自分はまだ若い、可能性があると思い込んではいても、客観的に見ればアラフィフはもう人生のやり直しのきかない年齢です。婚活は自分のスペックをすべて市場に出しての勝負なので、1日でも、1秒でも若いうちに動いたほうが有利です。」
厳しいと言われるアラフィフ男性の婚活。そこで中村さんが座右の銘にしたのは、「ありのままの自分で戦わない」ことだった。自分の「間違い」に気づき、改善し、「選ばれる自分」になることが重要なのだという。
既婚か未婚か。それが寿命に関わってくるとは知らなかった。独身中年男性に向けて結構ズバズバと書かれているが、これは客観的なデータをもとにした警告であり、中村さんの経験に裏打ちされた助言でもある。
■目次
はじめに
67歳で死なないための婚活
第一章
おじさんには価値がないことを自覚して 若い女性を狙うのを諦める
01 結婚は等価交換
02 年齢差=年収×100万分の1の法則
03 いままで結婚できなかったのは自己責任!
04 「自分はキモイかも」という自覚を持つ
05 プライドを捨て、自慢話するのをやめよう!
第二章
マザコンを卒業して 親の介護を放棄する
06 45歳のキャリアウーマンを狙う
07 子どもを諦めて、家を出る
08 親の幸せより、自分の人生のほうが大切
09 「結婚したくない女性」は誰ですか?
第三章
「ありのままの自分」で戦わない あらゆるマイナスを改善して「選ばれる自分」になる
10 絶対条件の「清潔感」をつくる!
11 失敗しない婚活ファッションは「全身ユニクロ」
12 趣味を控えて、余計な物を食べない
13 複数のマッチングアプリをフル活用する!
14 最大公約数のプロフィール写真を撮る
15 プロフィール文は明るく+ポジティブ+清潔感
16 事実をすべてオープンにするのはNG
17 深く考えず「いいね!」を押しまくる
18 自分のアピールをせず、女性の話に共感する
第四章
婚活傾聴 お見合いで女性の心を掴むコミュニケーション術
19 婚活は「聞く」が9割
20 女性に余計なことを言わない
21 女性が語りたくなる環境を整える
22 共感+相手に興味を持つ+否定しない
23 お見合いの前に、女性のことを考える
24 同じものを注文する。目線を合わせる
25 雑談をやめて、すぐに本題に入ろう
26 お見合いは60分、長くても90分で終わらせる
第五章
「この人と結婚する」というクロージング
27 2回目のデートで「好意」を自然に伝える
28 スキンシップにはまだ早い!
29 長時間一緒に時間を過ごして心地がいいか
30 「この女性と結婚する」と決断する
おわりに
婚活で仕事も人生もうまくいく
■中村淳彦さんプロフィール
なかむら・あつひこ/ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場でフィールドワークを行い、貧困化する日本の現実を可視化するために傾聴・執筆を続けている。49歳だった2020年9月に最悪な悪性腫瘍と言われる膠芽腫で妻を亡くし、悩んだ末にすぐに婚活を開始。2022年3月、婚活マッチングアプリで出会った同じ年齢のキャリアウーマンの女性と入籍する。代表作『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)は2019年本屋大賞ノンフィクション本大賞にノミネート、『東京貧困女子。‐貧困なんて他人事だと思ってた‐』として連続ドラマ化(主演・趣里)し、今秋から放送予定。『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『日本の風俗嬢』(新潮新書)、『女子大生風俗嬢』(朝日新書)など著書多数。2022年6月に開始した音声配信「Voicy」は毎日更新して、軽快に中年婚活を語って人気パーソナリティーとなっている。
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