本を知る。本で知る。

「カラダを売るのは当たり前」――Z世代が中心となった歌舞伎町で、今何が起こっているのか

歌舞伎町と貧困女子

 日本随一の繁華街、歌舞伎町。「トー横キッズ」「地下アイドル」「ホス狂い」「街娼」......女性の貧困にまつわる数々の社会問題をはらむ街のリアルを、ノンフィクションライターの中村淳彦さんが追った。

 中村さんの著書『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)は、なんと2022年10月からの取材をすぐにまとめて一冊にした本だ。まさに現在進行形の歌舞伎町を切り取っている。

 TOHOシネマズ新宿のある新宿東宝ビル周辺にたむろする未成年者たちを指す、「トー横キッズ」。地下アイドルやホストに「貢ぐ」ために、売春する女性たち。今歌舞伎町には、経済的にも、精神的にも不安定な女性たちが集まっている。中村さんは、Z世代(1996年以降生まれ)の若者たちが台頭してから、歌舞伎町の様子が変わったとつづる。

 Z世代の女の子たちが次々と歌舞伎町に流入するようになって、歌舞伎町で女性が売春することは常識であり、当たり前という様相を呈している。ホス狂いはいくらお金があっても足りない「底なし沼」に陥り、未成年少女は好きな男の子の生活を支え、ヤクザは追放運動に追いつめられて妻や恋人を頼り、そして女性たちは男のためにカラダを売る。

 「ヤクザに追われる現役『地下アイドル』」「中学時代から歌舞伎町のネットカフェ暮らし」「精神病院から退院後に窃盗・逮捕」「父親が働くセクキャバでナンバーワンに」など、センセーショナルな見出しが並ぶ本書。「売春は常識、当たり前」という街の女性たちは、どんな日常を過ごし、何を語ったのか。

 中村さんは、今歌舞伎町で起こっていることはいずれ他の繁華街に伝染していくのではないかと推測している。本書を通じて、2022年のリアルタイムの歌舞伎町を知ってみては。

【目次】
第一章 トー横キッズと未成年売春
第二章 絶望の地下アイドル
第三章 「ホス狂い」の女たち
第四章 売春という生存戦略
第五章 カモられる中年男性
終章  出会いカフェの女

■中村淳彦さんプロフィール
なかむら・あつひこ/1972年生まれ。ノンフィクションライター。貧困や介護、AV女優や風俗などの社会問題をフィールドに取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話にひたすら耳を傾け続けている。著書に『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)、『崩壊する介護現場』(ベスト新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(ともに幻冬舎新書)、『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)、『日本が壊れる前に「貧困」の現場から見えるネオリべの構造』(藤井達夫と共著、亜紀書房)など多数。



   
  • 書名 歌舞伎町と貧困女子
  • 監修・編集・著者名中村 淳彦 著
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2022年12月 9日
  • 定価990円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・224ページ
  • ISBN9784299034823

ノンフィクションの一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?