教科書に載っている文豪も、私生活はメチャクチャだった人ばかり。仕事から、借金から、人間関係からどんどん逃げる45人の文豪を紹介した『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』(実務教育出版)が、2023年7月12日に発売された。
「人間不信に陥り引きこもる夏目漱石」や「地震のとき妻子を見捨てて逃げた芥川龍之介」、「朝起きられずに職場から逃げた江戸川乱歩」など、カッコいいイメージが台無しになる逃亡劇が満載。しかしなかには、小説さながらのドラマチックなエピソードも。ここでは、ミステリーの女王アガサ・クリスティの逃亡事件をご紹介しよう。
30歳でデビューし、1926年、36歳の時に6作目の『アクロイド殺し』で一躍有名となったアガサ。ところが成功の矢先に、失踪事件を引き起こす。夜の11時に娘を家に残したまま車を出し、そのまま行方不明になったのだ。翌朝、乗り捨てられた車を警察が発見。有効期限の切れた運転免許証と洋服が車内に残されていた。
事件は世間の大きな関心を集めた。新聞各紙に次々と目撃情報が寄せられ、当時の夫アーチーには殺害の疑いまでかけられた。
アガサが見つかったのは、失踪から11日後。あるホテルに「テレサ・ニール」という偽名で宿泊していたのだ。宿泊客が通報し、アーチーが迎えに行った。その後、報道陣にこんな説明をしたという。
「妻は完全に記憶喪失に陥っていて、自分が誰だかわかっていないようです」
実はアガサが失踪する前に、アーチーから離婚を切り出されていたことがあとからわかった。アガサが使った偽名の姓「ニール」は、アーチーの愛人の姓と同じだった。失踪は夫への当てつけだったのか......。しかし、どれだけマスコミが聞き出そうとしてもアガサは失踪中のことを「まるで覚えていない」と言うばかりで、生涯真相を語ることはなかったという。結局アガサはアーチーと離婚し、オリエント急行での旅行で出会った考古学者と再婚して、幸せな人生を送った。
本書の著者で偉人研究家の真山知幸さんは、文豪の逃げっぷりを見て「逃げてもいいんだ!」と勇気づけられたり、気持ちをやわらげたりしてほしいと語っている。反対に、いや、自分は逃げたくない! という読者にぴったりの「泥棒を目の前にして無言で見つめる川端康成」や「火事が起きてもレストランで食べ続けた谷崎潤一郎」など"逃げなさすぎる"文豪も紹介。逃げるにせよ逃げないにせよ、やはり文豪はひと癖もふた癖もあるらしい。
【目次】
第1章 人間関係から逃亡しちゃった文豪
第2章 家族から逃亡しちゃった文豪
第3章 仕事から逃亡しちゃった文豪
第4章 勉強から逃亡しちゃった文豪
第5章 自分との約束から逃亡しちゃった文豪
第6章 借金から逃亡しちゃった文豪
第7章 むしろ逃亡しないのがヤバい文豪
■真山知幸さんプロフィール
まやま・ともゆき/著述家、偉人研究家。1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年より独立。偉人や名言の研究を行い、『君の歳にあの偉人は何を語ったか』(星海社新書)『最高の人生に変わる天才100の名言』(PHP研究所)など著作多数。『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』(共に学研)は計20万部を突破しベストセラーとなった。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義、宮崎大学公開講座などでの講師活動も行う。
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