たっぷりの余白に、だらりと寝そべる柴犬のイラスト。ツイッターなどでも注目を集める精神科医・藤野智哉さんの新刊はそんな、ゆる~く肩の力が抜ける表紙で読者を出迎えてくれる。
『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、仕事でも家庭でもついがんばりすぎてしまう人、人間関係で「誰か」の決めた価値観やルールに合わせすぎて、振り回されてしまいがちな人が、立ち止まって自分を大切にするきっかけをくれる。
一生懸命な人や、優しいあまりに頑張りすぎてしまう人が、適切に休んだり甘えたりすることができるような、ゆるっと優しい言葉たち。疲れてしんどい心にしみ込む、精神科医の知見が詰まっている。
「『明日から本気出す』って思い続けている間に人生が終わる。それもまた、いい人生じゃないですか?」
藤野さんは、「休まずがんばり続けられる人」ではなく、「がんばり続けるためにうまく休める人」をめざすよう勧めている。そのためには、何かをがんばろうと思ったとき、同時に「そのぶん、何に手を抜こうか?」と考えることが大切なのだそう。
休みの日に「ダラダラして1日が終わってしまった」と落ち込むことはよくあるのではないだろうか。でもそれは、藤野さんに言わせてみれば「貴重な時間を無駄に使うなんて最高の贅沢」。たまには贅沢な日があってもいい、と考えて自分を責めないことが大切だ。
明日にまわせることは、明日にまわす。通常営業はゆるめて、本気は非常時に取っておく。結局、非常事態なんて起こらず、「本気を出すことなく人生を終えられたらラッキー」だと藤野さんは言う。まさに「力を抜いて生きるコツ」だ。
同時に、藤野さんが大切にしていることの1つが、受け流す力と頼る力である。
「心を鍛えて強くするより、弱くても生き延びられるよう、ストレスの受け流し方やケアの方法を身につけるほうが圧倒的に大事」
ここでの「受け流す力」とは、 よく聞く「レジリエンス」でもある。これは、しなって元に戻る力のこと。強風が吹いてもよくしなる木ならば、めったに折れない。あるいは、神社の御神木に添え木をすることで、自分以外のものに重さを分散させ、折れないようにする。「人間も同じで、自分にかけられた負荷を他人にちょっと手伝ってもらうのも強さ」だと藤野さんは言う。
無理に試練に挑んで心を鍛えるよりも、本当に自分が乗り越える必要があるかを考え、避けられるなら避けて通っていい。自分の人生に必要なものだけを大事にしていく。そのようなしなやかな取捨選択ができることもまた、藤野さんの言う「心の強さ」なのだ。
■藤野智哉さんプロフィール
ふじの・ともや/1991年生まれ。精神科医。産業医。公認心理師。秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、メディアへの出演も多数。著書に『「自分に生まれてよかった」と思えるようになる本』(幻冬舎)『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)など多数。
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