本を知る。本で知る。

私がいてあげなくちゃ......家族を歪ませる「共依存」の謎

共依存

 引きこもりの子を抱える親、アルコール依存症やギャンブル依存症の患者のパートナーなどがおちいりやすい「共依存」。支え、守ろうとした愛は、なぜ当事者たちの首を絞めてしまうのだろうか?

 現在、日本公認心理師協会会長を務めている信田(のぶた)さよ子さんの、2012年に刊行された著作が、新たに『共依存 苦しいけれど、離れられない 新装版』(朝日新聞出版)として2023年6月7日に発売された。新装版に寄せて、『母がしんどい』『キレる私をやめたい』など、家族とメンタルヘルスに関するコミックエッセイを描いているマンガ家の田房永子さんが、解説を書いている。


 共依存は、相手から依存されることに自身の存在価値を見出し、その関係性に過度に依存している状態。問題のあるパートナーや子どもに対して「私がいてあげなくちゃ」と思い、献身的に世話をしたり、相手をコントロールしようとしたりする。本人たちは健全な愛情だと思っていたが、だんだん苦しくなり、しかし離れられない......という悪循環におちいっていく場合が多いという。

 本書によると、共依存という言葉が急速に一般的になったのは、2005年前後のこと。当時すでに40年近くにわたってアルコール依存症の治療にたずさわっていた信田さんが、依存症とアダルト・チルドレン、DVなどとの関連性から、共依存の謎にせまっていく。

 さらに、山田詠美さんの小説『風味絶佳』や、韓国ドラマ「冬のソナタ」、「男はつらいよ 寅次郎の青春」「嫌われ松子の一生」「ジョゼと虎と魚たち」といった映画も参照。感動的な純愛ストーリーとして社会現象になった「冬ソナ」も、実は共依存の要素をはらんでいた?

 執筆当時から続く社会問題に加えて、「毒親」や「ヤングケアラー」といった新たな言葉も一般的になった現代。本書の考察から、家族やパートナーとの関係性の築き方のヒントをもらえるかもしれない。

【目次より】
第一章 アダルト・チルドレンと共依存
第二章 共依存とケア
第三章 ケアする男たち
第四章 『風味絶佳』は「風味絶佳」だ
第五章 「冬のソナタ」は純愛ドラマか?
第六章 母の愛は息子を救えるか?
第七章 かけがえのなさという幻想
第八章 暴力と共依存
第九章 偽装された関係

■信田さよ子さんプロフィール
のぶた・さよこ/1946年岐阜県生まれ。公認心理師。お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒、同大学院修士課程修了。95年原宿カウンセリングセンター設立、所長を経て現在は顧問。日本公認心理師協会会長。著書に『依存症』『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』『家族の悩みにおこたえしましょう』『母・娘・祖母が共存するために』『〈性〉なる家族』『家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ』、『言葉を失ったあとで』(上間陽子氏との共著)など多数。



   
  • 書名 共依存
  • サブタイトル苦しいけれど、離れられない 新装版
  • 監修・編集・著者名信田 さよ子 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2023年6月 7日
  • 定価858円(税込)
  • 判型・ページ数文庫判・224ページ
  • ISBN9784022620781

学術書の一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?